「自分は仕事ができる」「優秀だ」と過大評価してしまうのはなぜか。『世界は行動経済学でできている』(アスコム)を書いた橋本之克さんは「経験や能力がない人ほど自分の立ち位置を正しく認識できない傾向がある。この“認知のズレ”は、学校や会社など日常のあらゆるところで見られる」という――。(第7回)
「自分に自信がある人」ほど騙されやすい
「まさか私が引っかかるはずがない」
「自分は大丈夫」
これは、詐欺被害にあった人がよく口にするフレーズだそうです。みなさんも聞いたことがあるかもしれませんが、詐欺師に一番引っかかりやすいのは、「自分に自信がある人」です。
災害や事件、事故が起きたときなども、「こんなことが起きるなんて怖いね」「なんだか物騒な世の中になったね」などと言いながら、なぜか自分がその当事者になる可能性については考えません。「自分はそんな大変な目にはあわないだろう」「自分には関係ない」と思い込んでしまうのです。
こうしたときは、自分の立ち位置を正しく認識できず、「自分から見えている自分」と「他人から見えている自分」にズレが生まれています。自分では「私はそれなりに賢いし他人の甘い言葉には耳を貸さないぞ」と思っていても、詐欺師からすると「チョロいカモだな」と思われていたりするわけです。
このようなときには「自分に対する認知のあり方」に関係する、「ダニング=クルーガー効果」が影響しているかもしれません。