絶滅危惧種の外科医は救えるか

医師の世界で、外科医不足が問題視されるようになって久しい。他の診療科の医師に比べ、長時間労働、長い修行期間、立ちっぱなしの手術、厳しい徒弟制、時間外労働の多さ……とハードな職場ながら、基本給などの待遇は眼科・皮膚科医などと変わらない、ということがほとんど。

それに加えて、本件の事例によって、「術後せん妄であっても、事と次第によっては逮捕拘留される」「無罪を証明するために9年間かかる」という残念すぎる可能性が追加されてしまった。

本件の一連の裁判以降、「乳腺外科を専攻する男性外科医が途絶した」「乳腺外科医が美容外科に転職した」といった話を医師仲間からしばしば聞くようになった。そもそも女性外科医は少なく、辞めた男性外科医の穴を全て埋めることはかなり大変だ。そこへさらに、「男性外科医減少」となったら現場は回らなくなってしまうかもしれない。

2023年以降に更衣室での盗撮や、患者の体を触るなどしたことで戒告以上の処分を受けた医師と歯科医師は計102人。そのうち42人が、わいせつ事件で有罪が確定している。世の中には医師の立場を悪用したケースもある。

客観的に見れば、「A医師がわいせつ行為をした可能性」はゼロではないかもしれない。だが、それは極めて低いと私は考えている。弁護側が法廷で述べたように、「カーテンで仕切られただけの4人部屋」かつ「カーテン横にはB子の母がいる」という非密室状態でわいせつ行為に及ぶだろうか。実行したとすれば、逆にかなり不自然な行動に思える。

息子を失ったA医師の悲しみは想像に堪えないが、本事件を糧として、今後の医療裁判においては専門家の意見や科学的データが採用されやすくなる司法改革を望んでやまない。

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