東大では、第二外国語の授業に力を入れている。なぜか。東大カルペ・ディエム『東大1年生が学んでいること』(星海社新書)より、東大独自の語学プログラムでフランス語を学んだ学生のエピソードを紹介する――(第1回)
東京大学駒場Iキャンパス正門
東京大学駒場Iキャンパス正門(写真=Kakidai/CC-BY-SA-4.0/Wikimedia Commons

爆速で語学力が向上する東大の授業の中身

トライリンガル・プログラム(TLP)とは、日本語、英語に加えて第二外国語を本格的に学び、1年で実用レベルの外国語を習得する授業です。

TLPに所属すると、通常の第二外国語の授業とは別に、外国語のネイティブ教員などによる演習授業を受けることになり、他大学とは比較にならないほど速いペースで授業が進んでいきます。

加えてTLPコースは、演習授業とは別に、国際研修という海外研修が行われることが多く、学習した外国語を実際に海外で使用する環境にも恵まれています。現在は、中国語、ドイツ語、フランス語、ロシア語、韓国朝鮮語、スペイン語の計6カ国語で開講されています。

授業の内容については各言語ごとに異なりますが、今回は筆者の体験したフランス語TLPについてご案内します。

フランス語演習の授業では、フランス語のテキストを参照しながら、会話形式やゲーム形式など様々な形で実践的なフランス語を学んでいきます。教室で一方的に先生の話を聞きながら、外国語の文法を習うというような、伝統的な言語学習の形とはまったく異なり、とにかく「遊び感覚」で外国語を学んでいくところに特徴があります。

ネイティブ教員が授業を担当するときも、日本人教員が授業を担当するときも、基本的にはフランス語のみで授業が行われ、もしフランス語で理解できないことがあっても、質問をするにもフランス語が求められるというスタンスで進んでいきます。

1年程度でフランス語をマスター

驚くことに、大学1年生の初回の授業から、オールフランス語です。筆者が最初の授業に出席したときは、何もフランス語を理解しておらず、Bonjour(ボンジュール)というフランス語の挨拶すら知らない状態でした。

それなのに、フランス語の先生は、初回から私に対して、Bonjour! Bonjour! Ça va bien? Comment tu t’appelles?(こんにちは! 調子はどうですか? 名前を教えてください)と聞いてきました。

Bonjourが挨拶の言葉っぽいことは、雰囲気から察することができたのですが、それ以降については一切理解できず、フリーズしてしまった思い出もあります。

こうして、とにかく「フランス語を使うこと」に重きを置いた授業を通して、学生は1年程度でフランス語をマスターしていきます。

「そんな短期間で外国語をマスターできるの?」と疑問に思われるかもしれませんが、TLPでは実質的に留学と同じくらい外国語に触れる環境が整っているため、飛躍的に語学力が伸びていきます。