高賃金の知的労働こそがターゲットとなっている

マッキンゼー・グローバル・インスティチュートのレポートにも、以下のような記述がある。「前世代の自動化技術は、賃金が所得分布の中間層に位置する職業に与えるインパクトが最も大きい傾向があった。(中略)またマッキンゼーがこれまで作成したモデルでも、業務の自動化により中期的に最も大きな影響を受ける可能性が高いのは、中間所得層の下位20%であることが示唆されていた。一方、生成AIにより最も大きく変化すると考えられる業務は、賃金の高い知識労働者の業務である。なぜなら、これらの業務は、以前は自動化の対象にはなりにくいと考えられていたが、技術的な自動化ポテンシャルが高まったからである」

これを言い換えると、従来、技術的な限界によって知的労働全ては自動化できないという制約のもと、自動化可能な中で最も経済的インパクトが大きいのは中間所得層の職務であった。しかし、AIの能力が人間に匹敵するとなれば、その制約はないも同然である。そのため、現在は最も経済インパクトが大きいとされる職種、すなわち高賃金である知的労働こそが生産性向上のターゲットとなっているのだ。

ストリーミング技術の登場は典型的

技術革新と、産業の破壊的変化、そしてそれに伴う失業は表裏一体だ。先に触れたように、テクノロジーが既存の産業構造を打ち壊すことはディスラプトと呼ばれるが、そうして壊された業界は、収益性で劣後し、やがて消えていく。ストリーミング事業は、技術発展によりインターネット回線の通信速度や帯域が増加したことにより、DVDなどの物理メディアを介する必要がなくなって登場したもので、典型的なディスラプトの一例だ。