マルトリが健康や寿命にまで影響を及ぼすメカニズム

子ども時代の逆境体験が、これほどまでに生涯にわたって心身の健康に影響を及ぼすプロセスをわかりやすく表したのが「ACEピラミッド」です。カイザーの予防医学部門主任だったフェレッティ博士が提案し、疾病予防管理センターが完成させたモデルです。子ども時代に受けたマルトリなどの逆境体験があると、健全なこころや神経の発達が損なわれます。そして、社会的・情緒的・認知的障害を抱える可能性が高くなります。

・社会的障害――対人関係に苦しむようになる
・情緒的障害――意欲の消失、集中力の低下、うつ症状の発現
・認知的障害――認知機能がなかなか上がらない

これらの障害への対処として、アルコールや薬物乱用、喫煙、食生活の偏りなど健康を害する行動が選ばれやすくなります。すると、疾病、障害、社会不適応が生じて、最終的に早期の死亡に至るということなのです。このメカニズムから考えれば、ピラミッドの上位にある障害等を防ぐために、より下位の段階で介入や予防の策を講じる必要があります。

1990年代に作成されたオリジナルのACEピラミッドは逆境体験を底辺とした6段階のものでしたが、2020年にはさらに「社会情勢」「親世代のトラウマ」が追加されたピラミッドが登場しています。