ディズニーもDEIを弱める。多様な主人公像はどうなるか

世界中の子どもたちに夢と希望を与えてきたディズニーもまた、方針を転換する。管理職の報酬基準から多様性や包括性を外し、よりビジネス的成功に重きをおいた評価を行うという。

だが、近年のディズニーアニメのヒット作には、まさに多様性を重視する観点から生まれたものが少なくない。

メキシコ人の少年が死者の日(日本のお盆のような風習)にあの世とこの世を行き来する『リメンバー・ミー』(2017年)、またハワイ先住民の女の子が大冒険を繰り広げる『モアナと伝説の海』(2016年)は、2024年公開の2作目も好調で、実写化も予定されている。

動物の世界を舞台にした『ズートピア』(2016年)では、西洋の昔話によく登場するウサギ、キツネ、ヒツジ、ライオンたちの固定化された役割を活かしつつ、それをひっくり返すことで、一筋縄ではいかない正義のあり方を描いた。コロンビア出身のシャキーラが歌った主題歌「トライ・エヴリシング」は、日本の子どもたちの運動会でもすでに定番曲となっている。

名作のリメイクもディズニーのおハコだが、人魚姫を黒人シンガーソングライターのハリー・ベイリーが演じた実写版『リトル・マーメイド』(2023年)では、キャスト発表当時は「肌の黒いアリエルなんてありえない!」というネガティブな声も上がった。

しかし公開されると、アメリカでは実写版『アラジン』(2019年)を超え、日本でも初登場1位と興行的成功を収めたのだ。

映画がマイノリティの子供たちをエンパワメントしてきたのに

それでもなお多くの国際的コンテンツにおいて、白人キャラクターが多数派を占めることは事実だ。だが、ディズニーやピクサーの先導してきたDEI推進は、さまざまな出自の子どもたちが「自分と同じ肌の色、目の色、髪の色の主人公を物語の中に見つけられる」という現実を叶えつつあった。

「わたしもヒロインになれる」「僕だってヒーローだ」と夢見ることは、人生に大きな影響をもたらす。そうやってフィクションは、多くの子どもたちをエンパワメントしてきたはずだ。

さまざまな出自の小学生たち
写真=iStock.com/FatCamera
※写真はイメージです