本来、キャリアセンターは学生と社会とをつなぐ役割を期待されてきた。しかし、その機能を十分に果たしていないのが実情だ。たとえば、大学の正規職員であるスタッフは仕事がわかり始めた3~5年で異動してしまい、センター内に知識や経験が蓄積しにくい状況にある。

また、ネット環境が整備されたことで、企業の人事担当者と直接コミュニケーションをとる機会が減っていることも問題だ。求人データをネットで送ってもらい、あとは学生の選択に任せてしまうことが多い。事前の事業内容のチェックもなく、いわゆる“ブラック企業”のスルーを許し、実際に学生が内定を取ってきてしまうこともある。しかし、下位校の場合は「それでも無職よりもいいか」となりがちなのだ。

キャリア教育についても、一部では外部の人材開発会社への“丸投げ”が横行している。また、「やりたいこと志向」を重視しすぎて、「やりたいことがないから就活に力が入らない」という矛盾も生んでいる。

2011年の「倫理憲章」改定で、これまで9月末だった合同説明会などの企業の採用活動の開始時期は、12月へ先送りされることになった。ただし、採用試験の解禁はこれまでと同じ4月1日で、就活の期間は2カ月も圧縮される。そこで有利なのが大企業に数多くのOBが就職していて、彼らに直接アクセスできる上位校だ。説明会前のOB訪問で一歩リードできるからである。

それを横目で見ていた中位校以下の学生は焦りを募らせ、できるだけ多くの企業説明会に参加しようとするはず。そうなると会場がパンクする恐れが出てきて、説明会という就活の“入り口”の段階での選別強化が行われるだろう。そこでの内々の基準は「学校名」となり、ますます上位校優位になりそうだ。

しかし、大学はなにも上位校だけではない。また、中堅・中小企業にも素晴らしい会社はいくつもある。それにもかかわらず、ミスマッチが続いている。大学、そしてキャリアセンターの存在意義を社会全体で改めて問い直す必要がある。

(構成=伊藤博之)
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