金利を上げても「緩和的措置」なのはなぜか

一方、日本はこれまで潜在成長率や政策金利目標を公には掲げてきませんでした。公表していたのは、13年に定めたインフレ率目標の2%のみ。おそらく、ゼロ金利やマイナス金利の中、国民に現実の数字を突き付けることがプラスだとは考えにくかったのでしょう。

馬渕磨理子『一歩踏み出せない人のための株式原論』(プレジデント社)
馬渕磨理子『一歩踏み出せない人のための株式原論』(プレジデント社)

24年になってようやく、日銀(日本銀行)は政策金利をマイナス0.1%から0〜0.1%程度に引き上げました。現在は0.25%です。マイナスをプラスに転じさせることはとても難しい判断だったはずですが、一度プラスになってしまえば、そこから数字を引き上げることはさほど難しくありません。それでも、日本の現状を見ると、まだまだ金利を米国のようにどんどん引き上げるのは国内経済の混乱を招くもとでしかないというのが、多くのエコノミストの見解です。

日銀の植田和男総裁は、政策金利を0.25%に上げた状態でも、締めつけているわけではないというニュアンスで話しています。「緩和的措置だ」と言っていました。なぜ、金利を上げたのに緩和的なのでしょうか。日本の潜在成長率(景気に左右されない部分の経済成長率)は0.7〜1.0%、おおよそ0.7%という数字です。これよりも金利が低ければ引き締めてはおらず、むしろ緩和的であるという考えかたです。確かに、経済成長率が0.7%だとすれば、0.25%はそれより低いので、緩和的という解釈は納得できます。

潜在成長率にインフレの期待値(インフレ率目標)2%を足したものを、中立金利と定義できるので、仮に潜在成長率を0.5%にして、これにインフレ期待値の2%を足すと2.5%が中立金利ということになります。長らくゼロ~マイナス金利の中で生活してきた日本人には、動揺を隠せないレベルの金利です。いくら米国のコミュニケーションスタイルに理解がある植田日銀総裁でも、さすがに現段階でこの数字を国民に突き付けるのは積極的ではないと考えているのか、政策金利目標には「まだ言及できない」と発言しています。いまの日本はまだ、中立金利の議論をするほど足腰が強くないので、潜在成長率よりも低い水準での金利の引き上げは0.5%までが現実的でしょう。

このような成長率や金利の動きを理解しておくと、株式市場がどれぐらい下落するのか、企業へのダメージはどの程度か、為替がどれぐらい円高に進むかなどを理解して、成長企業を見つけられるようになります。

(構成=力武亜矢)