新しい環境で失敗しないための重要視点
ピーター・ドラッカー『マネジメント【エッセンシャル版】 基本と原則』
上田惇生・編訳、ダイヤモンド社(2001年)
「マネジメント」という言葉を聞くと、私たちは職場を連想しがちです。経済学者ピーター・ドラッカーが打ち出したマネジメント理論は、組織の成果を最大化するための方法論として、多くのビジネスパーソンの間で知られていますが、本書『マネジメント』を読むと、この理論は、仕事から離れた生活のなかでも活用できるのだと気づかされるはずです。
60代になると、会社を引退し、新たな環境に身を投じる人も増えていきます。再雇用を選ぶ人もいれば、起業やボランティア活動などの新天地に身を投じる人もいる。はたまた、悠々自適な隠居生活を選ぶ人など、選択肢はさまざまです。
どんな環境を選ぶにせよ、新たな環境に行けば、その場に合ったやり方や道理があります。しかし、会社員時代の思考が抜けきらないと、自分のやり方を通そうとするがゆえに、周囲との軋轢を生み、新たな環境にうまく順応できずに残念な結果に終わる人も少なくありません。
その事態を避ける上でも、ドラッカーの視点は大きな武器になります。マネジメントの視点があれば、どんな場においても、自分の立ち位置を見直し、戦略的に、適切な行動を取り、自分の真価を発揮できるからです。
企業は「顧客」がいないと成り立たない
まず興味深いのが、「顧客」という概念について。「顧客とは誰なのか?」という問いかけは、企業の使命を定義する上で最も重要なものだとドラッカーは指摘します。一見簡単に思えるこの問いですが、実は非常に奥深いものがあります。
企業とは何かを決めるのは顧客である。なぜなら顧客だけが、財やサービスに対する支払いの意志を持ち、経済資源を富に、モノを財貨に変えるからである。しかも顧客が価値を認め購入するものは、財やサービスそのものではない。財やサービスが提供するもの、すなわち効用である。
企業の目的は、顧客の創造である。したがって、企業は二つの、そして二つだけの基本的な機能を持つ。それがマーケティングとイノベーションである。マーケティングとイノベーションだけが成果をもたらす。
企業の目的は、顧客の創造である。したがって、企業は二つの、そして二つだけの基本的な機能を持つ。それがマーケティングとイノベーションである。マーケティングとイノベーションだけが成果をもたらす。
「顧客の創造」を通じて、新たな潜在的な顧客を見出し、市場を作りだす。その上で、組織の成果は生まれるのです。