“年齢自虐”をどうかわしたらいいのか

さらに卓球サークルでは、若い頃には気づかなかった「つなぎの自虐」を知りました。

このグループで、元気おばあちゃんAさんと明るい60代女性Bさんがとにかくコミュニケーション能力が高い。誰に対しても「うまくなってるよ~!」とたくさん話しかけてくれます。

そしてAさんBさんは、何かとすぐ「私たちが平均年齢上げてるから~」と言います。「私たちはこのメンバーの中でも多く年をとっている」ということをわざわざ口に出すのです。

最初に聞いた時、ドキッ! としました。大学生や高校生がいる手前、40代の私は「どっち」に入るべきか⁈ と。

学生さんから見たら同じ種類だと思うけど、60代・80代に対して「私もでぇす」と言うのは変な気がする。言ってみようかと思ったけど、やっぱり今の私にはまだ早い気がしました。

ここは「若い人」のフリをさせていただこう、と5秒くらいの間に判断して、困った顔でニコニコする、という表情で私のこの複雑な思いを表現することにしました。

【イラスト】「困り顔スマイル」で複雑な思いを表現してみた
イラスト=田房永子

20代の頃にはわからなかった

しかしこの、年上の女性による「あたしたちっておばさんだから~」という唐突で本筋(卓球)とは関係ない自虐の叫び、実はものすごい“つなぎ”になってるんだということが今になってわかるようになりました。

20代の頃はこの、年上の女性たちによる“自己卑下としての年齢自虐”を非常にウザく感じていました。年齢なんてみんな平等に与えられたものを、多くとっているから「若い人より下」みたいに宣言することになんの意味があるのか、と。

しかしこの「年齢自虐」は、初対面の人も混ざった老若男女の同士でなにかする際に場の緊張をほぐすには最も手っ取り早くお手軽なトーク術なんだ……そう気付きました。

何も言わずにただ卓球の練習をするのでもいいんだけど、堅い時間が流れます。例えると、つなぎの入ってないポロポロと崩れやすいハンバーグです。

そこに年長者の「私が平均年齢上げちゃってるわ~!」が入る事により、その場に漂っていた”目上の人への緊張感”が瞬時にとけます。さらに46歳の女(私)のフォローとしての困り笑顔がその場に投じられ、同じく50代男性による「アハハ……」という返事になっていない笑みも生まれます。学生さんたちは「無」のまま固まっていたりするけど、「年齢自虐」サーブに中年たちが「フォローの笑顔」というレシーブを返すことにより、初対面の人が交ざる上に老若男女すぎてわけわからん関係にラリーが生まれるのです。明らかに場の空気が一気にゆるみ、徐々にみんながリラックスして練習できるようになるのです。

挽肉たち(場の緊張感)に、パン粉(年齢自虐)と卵(中年の笑顔)という「つなぎ」がはいると、空間や関係性、空気がふわふわになる。肉汁ジュッワーになるのです。

デミグラスソースがかかったハンバーグ
写真=iStock.com/masa44
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