宗教を利用することを抑制する仕組み
したがって、「慈悲」「寛容」「平和の実現」「平等」といった宗教に通底する理念を、政治利用されない仕組みづくりが必要になる。翻って、宗教の本質に立ち返りさえすれば、紛争の解決への道を見出せる、ともいえる。
そのためには、異なる宗教間の国際対話の場がとても重要になってくる。相互理解を深めるとともに、宗教指導者や政治家が宗教を利用することを抑制する仕組みを構築しなければならない。
宗教間の国際対話の場としては、世界宗教者平和会議(WCRP)がある。これは1970年に京都で発足した世界最大の諸宗教間対話組織である。この会議は、宗教を超えた対話を促進し、平和のための宗教協力を目的にしている。2024年7月には国際会合が広島で開催された。だが、世間一般でWCRPの存在はほとんど知られていない。認知度を高めていく努力が必要だ。
宗教戦争の歴史は長く、その原因や構造を理解することは難しい。しかし、先にも述べたが宗教の本質的な教えに立ち返れば、平和的共存の道を見出すことができるはず。宗教が持つ平和と慈悲の精神を活かす、新たな仕組みづくりが求められる。