今年最もリアルな医師役を演じた
6位タイ 松山ケンイチ 32点
司法の独立とあんこの味にこだわり続けた男
またもやトラツバからエントリー。大の甘党であんこにこだわりをもつという使命を帯びて、コミカルな仏頂面を貫いたマツケンだが、「司法の独立」という揺るがないテーマも背負った、重要な役どころだった。すべての人を公平・平等にとらえる法律を、政治家に恣意的に蹂躙されて憤る姿は、令和の法曹界にとっても胸アツだったのではないか。
また「お別れホスピタル」(NHK)で演じた医師は、「死との向き合い方は他人や世間、さらには家族が価値観を押し付けるものではない」ことを教えてくれた。多くを語らずとも包容力を体現した1年だった気もする。
5位 若葉竜也 36点
星の数ほどある医療ドラマの中で最もリアルな医師
「アンメット」(関西テレビ・フジ系)は記憶障害を抱える脳外科医が主人公という、やや荒唐無稽な設定だが、主演の杉咲花と二人三脚で「良質な医療ドラマ」に仕上げた若葉の功績はぜひとも称えておきたい。
有能な医師として知識と見解を理路整然と述べる姿に、セリフ感や演技臭がなく、説得力しかなかった。元恋人の記憶から自分が消されているやるせなさをこらえ、真相究明に猛進する役を淡々と演じたが、心中は穏やかでなく、脳内も常にフル回転という心情描写も伝わった。ホントうまい。
アニメ実写化の再現度高し
4位 矢本悠馬 40点
随一の軽妙さに加えて、安定感と意外性も生み出す
ここ数年、本当に働きづめである。画面の中でちょろつく面白さと軽妙さは既に評価されているが、今年は安定感と意外性を提供してくれた。「イップス」(フジではバカリズム演じる敏腕だがスランプの刑事を、適度な距離感で支えるバディ役、「舟を編む」では紙の手ざわりにこだわる製紙会社の営業で、辞書編纂の仕事で苦悩するヒロインを陰ながら支えて慕う役だった。安定の安心感。
「ゴールデンカムイ」(WOWOW)では脱獄王・白石由竹をぬるっとまるっと再現。正直、漫画のキャラと顔立ちが遠かったので、意表を突かれた感じだった。開けてみれば剽軽な役どころは適任で、実写化の不安を払拭。滑舌も愛嬌のある声もいいんだよなぁと新たな発見もあり、八面六臂の活躍を労いたいところだ。