なぜ彬子さまの「奔放さ」は支持されるのか

引用されていない末尾には、「スーツケースを自分で運び、ジーンズにセーター姿で目の前に立っている女の子が、まさか本物のプリンセスだとは思えなかったのだろう」と続く。

彬子さま
彬子さま(写真=Kounosu1/CC-BY-SA-3.0,2.5,2.0,1.0/Wikimedia Commons

ほかにも同書では、「側衛」と呼ばれる、皇族の側で守る(護衛する)人たちについて、ユーモラスに描いている。外国資本の飛行機のなかでCAさんたちに(通じないはずなのに)日本語で話しかけたり、巨漢ゆえに怪しまれ現地の警備員に追いかけられたりする。そんな「側衛」の姿が描写されている。

「かよ」さんが言う通り、「プリンセスなのに」意外な、そして、何より「面白すぎる」日々が、生き生きと書かれ、多くの人の興味を引いたから、売れ続けているのだろう。

しかし、もし、千田氏の言うように、「皇室の方々に無私の心を求める」のが国民の願いだとしたら、こうした彬子さまの奔放さは、支持ではなく、批判の的となるのではないか。

もちろん、先に触れた通り、秋篠宮家は、これから皇位を受け継ぐ立場の男性皇族が2人もいる。女性であり、皇位継承とは無関係の彬子さまとは、大きく異なるから、世間からの視線は、比べようもない。

「皇位継承者」に向けられる視線の厳しさ

小室眞子さんの結婚に対して、あれだけ社会が湧き立ったのも、将来の天皇=悠仁さまの姉であり、小室圭さんには義理の兄、つまり、家族としての品格を求めた要素が大きい。日本国と日本国民統合の象徴である天皇になる見込みの人の、義理の家族が、借金トラブルを抱えているとは何事か。そうした声が聞かれていた。

男性と女性の違い、という点では、「愛子天皇」を求める意見ともかかわる。

いまの皇室典範は、その第1条で「皇位は、皇統に属する男系の男子が、これを継承する」と定めており、天皇陛下の長女・愛子さまは、皇位継承順位に連なっていない。「女性天皇」や「女系天皇」についての議論は、ここでは置こう。

現時点では皇位を引き継げない愛子さまへの人々の好感度が上がる一方で、秋篠宮家に関しては、秋篠宮さまや悠仁さまという将来の天皇への視線が厳しい。また、小室眞子さんや佳子さま、紀子さまといった女性にむけても、ゆくゆくは天皇になる男性の支えとなっていないのではないか、という見方もあるのではないか。

こう考えると、皇位継承とはほとんどかかわりのない彬子さまがどのように振る舞ったとしても、微笑ましく見守るだけ、というのは、納得してもおかしくはない。

しかし、彬子さまの自由さへの反応と、秋篠宮家へのまなざしが、正反対なのは、まだ腑に落ちない。

なぜなら、彬子さまのほうが、秋篠宮家よりも、家族仲の点では、うまくいっているとは言いがたいからである。