金正恩総書記とプーチン大統領を喜ばせた

今回の非常戒厳と大統領の職務停止に伴う混乱で、当面、わが国や米国が韓国の指導者と冷静に議論を交わすことは難しくなった。今後、韓国の政治的混乱は一定期間続き、社会、経済、安全保障の不安定感、先行き不透明感は高まるだろう。それは、極東情勢、および世界経済に重要な影響を与える。

歴史的に朝鮮半島は米国、ロシア、中国など大国の利害が衝突する地政学の要衝だ。その重要地域で政治的混乱が起きたわけだから、その波紋がさまざまなところに波及することは避けられない。この混乱を見て、北朝鮮の金正恩総書記とロシアのプーチン大統領は内心安心する部分がありそうだ。

韓国と日米の経済安全保障の連携が乱れれば、北朝鮮は水面下で外貨の獲得やエネルギー資源調達を行いやすくなる。日米韓の足並みの乱れを突くようにして、北朝鮮がロシアに軍事物資や兵員の供与を増やし、ロシアがウクライナ戦争での戦線を優位に展開する可能性もある。米国のトランプ次期大統領は、ウクライナ戦争の早期終結を重視している。ロシアがこの機をいかして攻勢を強めることも想定される。

日本経済もタダではすまない

北朝鮮が、経済制裁の解除を狙って軍事挑発を増やす可能性もあるかもしれない。米国を射程に入れた、大陸間弾道ミサイルの発射実験を繰り返すようなことになると、米国の世論は北朝鮮を批判し、朝鮮半島情勢の緊迫感はさらに高まることも懸念される。

そうした変化が現実になると、主要投資家はリスク回避を優先する。割高感のある株式に調整圧力がかかる可能性もある。外国為替市場でも波乱があるかもしれない。為替市場が大きく変動すると、わが国企業の業績不安が高まることも懸念される。

さらに、韓国の政治混乱は極東地域の不安定感を高め、世界経済の下方リスク上昇につながることも想定される。そうしたリスクを抑えるには、韓国が、縁故を重視した商慣習、経済運営から脱却することが必要だ。ただ、それには時間がかかるだろう。今回の尹大統領の非常戒厳発表は、改めて韓国が抱える問題の深刻さを明らかにしたといえるだろう。

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