東大であればどこでもいい

しかし現在、東大文系の合格最低点は文一、文二、文三の間で大差がなくなってしまいました。2021年入試では、なんと文二、文三の合格最低点を文一が下回ってしまうという、この世代の受験生からしたら信じられない事態が起こっています。

次章で詳しく言及しますが、要因としては法学部からの定番の進路である官僚が激務の割に稼げなくなり、弁護士もロースクール改革の失敗や供給過多による需要の減少があることなどから、以前ほど魅力のある職業ではなくなってしまったというのが大きいでしょう。

今の受験生は「東大ブランド」が手に入ればそれで良いと考え、科類はどこでも良いというホリエモン的傾向が強くなっているように見受けられます。

ちなみに、この時代の東大文一を受験した有名人に岸田文雄前首相がいます。

岸田首相は3度の東大受験に失敗し、早稲田大学法学部に進学しており、ネット上では「東大落ちたくせに」と叩かれていることも多いです。

たしかに岸田首相は東京大学文科一類の受験に失敗していますが、前述の通り全盛期の文一を受けているという点にご留意ください。当時の文一は圧倒的であり、不合格者でも文二や文三であれば受かっていたということは十分ありえるでしょう。

そういうわけなので、岸田首相を叩くのは大目に見てあげてほしいというのが正直なところです。

名門鳩山家の生でも屈指の「受験天才」

第一章では戦前の神童エピソードを紹介しましたが、もちろん戦後にも天才は現れます。

鳩山邦夫さん(1970年東大法学部卒)は個人的に推している天才の一人です。

総務大臣兼内閣府特命担当大臣(地方分権改革)・鳩山邦夫(2008年ごろ)
総務大臣兼内閣府特命担当大臣(地方分権改革)・鳩山邦夫(2008年ごろ)(写真=総務省/CC-BY-4.0/Wikimedia Commons

そもそも鳩山家といえばとんでもない学歴エリート家系として知られており、なんと5代連続で東大生を輩出しています。

学者や政治家の家系で3代連続東大といった例はそこそこ見られますが、5代連続となるとかなりのレアケースでしょう。

名家揃いの政治家一族の中でも鳩山家はひときわ注目を集めており、『鳩山家の勉強法』という教育本が学習塾から出版されているほどです。

内閣総理大臣を2人も輩出した秀才揃いの鳩山家の中でも、とりわけ「受験天才」の才能が光っていたのは、鳩山由紀夫さんの弟である邦夫氏です。

邦夫氏は幼少期から神童と呼ばれ、数々の神童エピソードが語り継がれています。