裁判長の忸怩たる思い
被害に遭った女児のみならず、その家族、さらには同級生などの心にも、深い傷を負わせたMに対し、有期懲役しか下せないことの無念があったのだろう。裁判長も以下の言葉を口にしている。
「有期懲役刑を超える刑を選択する余地のない現行法の枠内では、被告人に対しては、その最高刑をもって臨むほかない」
だが、そうした忸怩たる思いはまったく通じなかったようだ。
懲役30年の判決を受けたMは、「教え子を強姦したというのは事実誤認である」として、同月のうちに控訴したのである。
10年3月、広島高裁で開かれた控訴審の判決公判において、裁判長は「無軌道極まりない」として、量刑を不服としたMの控訴を棄却。一審での懲役30年の判決を追認した。
ただしその際には、一審で「強姦46件、同未遂11件」としていた事実認定について、「(Mが)挿入を試みている状況は確認できるものの、(中略)姦淫にまで至ったことは、これを十分に確認することができない」として、「強姦45件、同未遂12件」であるとの変更がされたのだった。