朝の掃除から始まる、91歳アシスタントの一日
60歳までは勤め人をやりきって、70歳からは料理の世界へ。91歳の今でも、スケジュール帳は予定がビッチリと詰まっている。
まさるさんの一日は、自宅兼スタジオの掃除から始まる。
朝7時、部屋の隅々まで掃除機をかけ、台所周りを整えると、朝ご飯の準備に取りかかる。雑誌の撮影は10時から16時くらい、書籍となると夜までかかるので、椅子に座ってゆっくり食事ができるのは朝食だけだ。
「ご飯、みそ汁、焼き魚、あと昨日の残り物とか、しっかり食べるよ。健康のためのヨーグルトも欠かさない」
まさるさんが握るおにぎりは拳のように大きくてボリューム満点。パンのときは、冷蔵庫にある食材で“具沢山まさるスープ”をつくるそうだ。“腹一杯食べる”ことは、まさるさんの元気の秘訣でもある。
整理整頓できていないとおいしいものがつくれない
まさみさんのアシスタントとして台所に入るときは、食材や調味料の分量出し、調理道具や器の洗い物から片付けまで、テキパキとこなす。ガス台の周りが汚れれば、すかさず拭いて清潔を保つ。
「整理整頓ができていない台所は動きも悪くなるし、おいしいものがつくれないと俺は思うね」
撮影が終わるとまた掃除だ。調理台、壁、床まできれいに拭き、布巾は漂白剤に漬けて真っ白に、鍋類は金たわしでピカピカに磨く。包丁はまとめて砥石で研ぐ。台所を物であふれた状態にしておくのが嫌いで、とにかく何でも片付けてしまうから、手に取れる場所に道具類を置きたいまさみさんと喧嘩することも多々あるとか。
「そんな時は、みんなで使う台所だから何でも言い合って、お互いがいいと思う着地点を見つけるんだ」
撮影用の買い物も率先して行く。大きなリュックサックを背負い、自宅から30〜40分のスーパーやデパートへ。樺太時代に鍛えられた足腰の強さがあり、子供の頃から働くことに生きがいを感じているからこそ、これほど動けるのだろう。
夜の9時にようやく布団の中へ。長い一日が終わると思いきや、枕元にいつも置いてある「夢日記」ならぬ、「夢レシピノート」に頭に浮かんだ料理を書き込む。
「この食材にこれを合わせたら面白いとか、酒のつまみにいいなとか、メモ代わりみたいなもんだ。あと気になったことや、自分の心の中の嫌な部分も書いている。寝るとすぐ忘れちゃうからいいんだよ」
一日一日が充実し、元気に過ごせる秘訣は、どうやら“よく食べる”“よく笑う”“よく働く”ことにあるようだ。
「こき使われっぱなしだよ(笑)。でも、年寄りだからと言って何もしないのは損。失敗したっていいんだから、何でも挑戦したほうがいい」