メガ3行は6兆円もの融資ができるのか

わが国企業の手で重要インフラを維持・運営することは、経済安全保障体制の安定感を高めることになるだろう。それは単に経済上の問題だけではなく、わが国の政治にとっても重要な問題といえるかもしれない。

ただ、今回のMBO案件がすんなりと進むかは不透明な部分もある。メガバンク3行が6兆円もの融資を、スムーズに実行できるか否か予測が難しいところだ。わが国では、人口の減少が進むことは避けられない。それは企業収益の減少要因になるはずだ。セブンが効率的な成長戦略を迅速に立案し、実行する体制をメガバンクに納得させることが重要なポイントだ。

メガバンクのリスク負担を軽減するため、わが国の政府系金融機関がMBOの一部資金を提供する可能性もあるだろう。融資実行に向けコンビニ、スーパー以外のセブンの非中核事業の分離、売却など構造改革が加速することも予想される。

コンビニの寡占化、海外事業の分離…

また、独占禁止法への抵触を理由に、当局がMBOに慎重な判断を示すこともあるだろう。出資候補企業の一つに浮上した伊藤忠商事は、傘下にコンビニ大手ファミリーマートを持つ。もしMBOが成立した場合、ファミリーマートとセブン‐イレブンは伊藤忠商事の参加で重要な影響を受けることになる。

セブンイレブンの店舗
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公正取引委員会が、大手企業の協業深化で業界の寡占化が進むと判断することもあるかもしれない。その場合、MBOに待ったをかけることも予想される。国内の独占禁止法への懸念を払拭するために、他の総合商社やローソンとKDDIの提携にあったように通信企業がセブンのMBO買収に参画するシナリオもあるかもしれない。

セブンが国内の事業に集中するためには、米国など海外でのコンビニ事業の運営を分離することも考えられる。セブンが米国企業と資本業務提携を締結し、米コンビニ事業の効率性を高める。それは、銀行、商社などの利害関係者のリスク負担を支え、MBOの実現可能性を高める要素になるだろう。そうした取り組みが進まないと、利害関係者の納得を得ることが難しくMBOの協議は進みづらくなるかもしれない。