3つ目は、話す際の自分の気持ちにある。妙な自信を持って、「すごく面白い話があるんだけど」と切り出すと、相手の期待値が上がってウケなくなるし、笑いながら話すと聞き手のテンションを下げてしまう。

だからといって話に自信がなければ、いい結果を招かない。声がだんだん小さくなったり、オチの後に「まあ、それだけの話なんですけど……」とつけたしたりしては、面白くない感情が伝播してしまう。いったん話を始めたら結果がどうなろうと、「この話は面白い!」と信じて最後まで喋りきるしかない。

最後の理由は、話の伝え方だ。たとえば、ゴルフをまったくしない部下に対し、「オレはシングルで」と言ったところで理解されない。難しい表現や専門用語は避ける、もしくは用語の説明を入れて話をしよう。

話に書き言葉を多用するのもやめたほうがいい。たとえば、「昨日徹夜で、憔悴してるんです」といったところで、聞き手は一瞬「ショウスイ?」と考え込んでしまう確率が高い。こういった場合、効果的なのが「擬態法」。「昨日徹夜で、フラッフラなんです」と言ったほうが、相手も状況を思い浮かべやすいはずだ。

では、笑いが起きるために必要な要素とは何か。1つは「緊張と緩和」である。赤ちゃんに対する「いない、いない、ばあ~」であったり、

「暗がりのバーで女性を口説いていて、一緒に店を出たら妻だった」

という話であったり、緊張が緩和した瞬間、笑いは発生する。芸人がよく使う「フリ」と「オチ」という言葉も、「フリ」で状況や設定を紹介して、「オチ」によって状況や設定を裏切る、緊張と緩和のメカニズムだ。トークでウケるのに「オチ」は重要であるが、それを効果的に響かせるには「フリ」をしっかり構築しなければならない。

もう1つの要素が「共感」である。たとえば商談の際、引っかき傷の上に絆創膏を貼って、

「彼女に浮気がバレて顔を引っかかれたんです」

という話をしたら、「そういうこともあるな」とちょっとした笑い話にもなるだろう。しかし顔に包帯をぐるぐる巻いて、

×「彼女に浮気がバレて、バットで殴られたんですよ」

と語れば、相手はドン引きしてしまう。人はあまりに突拍子ない話を、すぐに受け入れられないからだ。芸人は奇抜なことを語ってウケているように見えるが、よく見ると7~8割が「それはそうだな」「わかる、わかる」という共感を与える内容になっている。