だから個別株はリスクが高い

結論を言うと、成功の対価を払おう。ポートフォリオに余計な手出しをするのはやめよう。運用資産の価値は増えることもあれば減ることもある。一喜一憂しても意味がない。

言うまでもなく、このアドバイスが有効なのは市場を幅広くカバーする、手数料の低いインデックスファンドかETFを保有している投資家だけだ。こうしたファンドには数百、数千社の株式が含まれている。

歴史を振り返れば、株式市場は常に上昇する道を見いだしてきた。一方、個別企業のなかには結局復活せず、最終的に株式の価値がゼロになったところも多い。個別株への投資が市場全体への投資よりリスクが高い理由の一つはここにある。

多くの人が恐れるのは市場の調整だけではない。投資商品を高値づかみすることも死ぬほど恐れている。この恐れは、相場が過去最高水準にあるときに投資をためらう、というかたちで表出する。「相場はここ1年で31%も上昇した。すべてが高すぎるから、今は投資するタイミングじゃないな」と考えるのだ。

「安くなるまで待つ作戦」はやってはいけない

テレビやスキー板を割安な値段で買おうとセールの時期まで待つのと同じように、市場が下降局面に入るまで投資を手控える人もいる。その気持ちは僕にもよくわかる。誰でもそうだが、僕だって日用品を定価で買いたくはない。

だがスキー板ならうまくいく話が、投資の世界にも当てはまるわけではない。こと投資においては、安くなるまで待つという作戦は資産を減らすことにつながる。

70%オフセールのカンバン
写真=iStock.com/Lubo Ivanko
※写真はイメージです

実は、株式市場が史上最高値を記録するのはふつうのことであり、決して珍事ではない。だから市場がしばらく上昇を続けたから、あるいは最高値を更新したから投資を先送りしようなどと言っていると、そうした状態が長く続く可能性がある。

金融ライターのベン・カールソンは、S&P500は1928年以降、平均して20営業日ごとに史上最高値をつけてきたと書いている。1926年から2019年のあいだ、S&P500はほぼ4年に3年は上昇している。上昇相場の翌年も、ほぼ4年に3年は上昇している。10%以上上昇した年の翌年はどうか。それほど上昇した翌年も、ほぼ4年に3年は上昇した。

ではとてつもない、ありえないような、ヒマラヤ山脈並みの高い水準に達した年、たとえば12カ月で50%上昇したら、その後はどうなるか。それほど上がったら間違いなく大きな調整が入るだろう。だが答えは「ノー」だ。