※本稿は、ニコラ・ベルべ著、土方奈美訳『年1時間で億になる投資の正解』(新潮新書)の一部を再編集したものです。
数年分の給料が吹っ飛んでも気にならなかったワケ
2020年に起きた新型コロナウイルス感染症に起因する市場の暴落によって、僕の運用資産はかつてないほど落ち込んだ。ほんの数週間で、数年分の給料に匹敵するほどの大きな穴が開いた。それでも売却を考えることもなければ、不安で眠れなくなることもなかった。
とはいえ自分に特別な才能があるとか、マゾの気があるとも思わない。なぜ平静でいられたのか。
それは株式市場の暴落はありふれた事象で、避けることはできず、また必要なものでもあると学んだからだ。
たとえば過去のデータが最もよくそろっているS&P500を見ると、1920年代以降、平均して年3回、5%の下落が起きている。さらに急激な下落も頻繁に起きている。過去100年を振り返ると、ほぼ16カ月に一度のペースで10%の下落が起きている。
では20%の下落はどうか。過去100年で見ると平均して7年に一度のペースで起きている。そして1950年代以降、S&P500の50%近い下落は3回、つまり22年に一度起きている。
株価が暴落することはよくあること
「株式市場が乱高下すること」は周知の事実で、これほど頻発しているのだから、いまさら驚くに値しない。だがそれでも毎度のことのように投資家は驚かされている。
下落によるダメージは、通常長続きしない。たとえば第二次世界大戦以降、20%以内の調整であれば回復して下落前の状態に戻るまでの期間は平均4カ月だ。そして1974年以降にS&P500が10%以上下落したケースを見ると、底を打った翌月には平均8%以上、1年後には平均24%以上上昇している。
金融史上最悪の惨事であった1929年の大暴落の後でさえ、市場は10年も経たずに回復している。暴落直前の株価のピーク時にニューヨーク証券取引所に投資した不運な投資家も、市場が底を打ってから4年半後の1936年には失ったお金をすべて取り戻せたはずだ。
それが可能だったのは、大恐慌の最中ですら企業は株主に配当金として利益の一部を還元し続けたからだ。