司馬遼太郎著『坂の上の雲』にも登場する「Z旗」が、国会内にある民主党の安住淳国対委員長の執務室に飾られている。安住氏は元防衛省副大臣で、海上自衛隊に依頼して取り寄せた。
Z旗は日露戦争時、日本海海戦を前にした東郷平八郎連合艦隊司令長官が旗艦「三笠」に掲げたことで知られる。船舶同士の通信に使う国際信号旗の一つだが、アルファベットの最後の文字であることから「後がない」ことを意味する。
「連合艦隊の各艦の金庫には作戦を記した暗号書が保管され、旗艦三笠が掲げる旗が作戦の暗号だった。Zを意味する赤、黄、青、黒の4色からなる旗を掲げたことから各艦が暗号書を確認したところ、そこに書かれていた一文が有名な“皇国の興廃この一戦にあり、各員一層奮励努力せよ”だった」(軍事評論家・浜田紡氏)
旗艦「三笠」は保存され、今も横須賀市の海岸で公開されている。運営しているのは防衛省の外郭団体で、補修等は海自横須賀地方総監部が行う。
海自関係者によると、安住氏は副大臣時代の昨年夏頃、家族と一緒に三笠を訪問。そのときZ旗の由来について詳しい説明を受けたことがきっかけで、Z旗に強い興味を持ったという。
「安住氏の家族が訪問・乗船したとき、海軍旗(旭日旗)とZ旗、大将旗の3種類がマストに掲げられたそうです。国際信号旗はアルファベットや数字などを示すものが計40種類あり、海自の各艦船や海自の補給部で保管されています。安住氏は三笠訪問後、海自側にZ旗の貸与を申し入れ、今年3月に貸し出されました」(前出関係者)
むろん、安住氏の執務室にあるのは三笠に掲げられたZ旗とは別物だ。
「安住氏に無償貸与し、安住氏から借用書をいただいています。艦船から持ち出したのではなく、使われてなかった物を貸し出しました。旗は額縁に収められ、『海幕長寄贈』と記したプレートが付いています」(海幕広報室)
この旗については防衛省の一部で「紛失扱いになっているのでは」という噂が流れたことがあるが、同広報室は「借用書があるのだから、紛失の事実はまったくありません」と一笑に付した。
安住氏はZ旗を借りた際、予算関連法案を成立させる覚悟を示したものだと説明していたという。瀬戸際の菅直人首相も、Z旗を掲げたい心境かもしれない。