「反抗的な行動」や「赤ちゃん返り」をする子どもたち

生まれたばかりの子どもが自分に接する大人を信頼するようになるためには、その大人が自分のあらゆる欲求を無条件に満たしてくれる人だと認識するところから始まる。中途養育においても、信頼関係を築くためには、ある一定の時期においては子どもの要求のすべてを聞き入れ、子どもに危害が及ばない限り、どのような行動をとろうとも、引き受ける必要があるといわれている。しかしながら、0歳児ではない子どもにそうした対応をするには大きな困難を伴う。

里親として子どもを迎えてからしばらくの間は、子どもは緊張していることもあり、よい子として振る舞ったり、周囲を観察しながらおとなしくしていることが多く、「見せかけの時期」といわれる。

約1週間ぐらい見せかけの時期が続いた後、幼児期・学童期の子どもであれば、反抗的な行動や赤ちゃん返りといった行動をとる。たとえば自立していた排泄を失敗する、ずっと養育者のそばにいたがる、好きなものしか食べない、哺乳瓶を使いたがるなどである。子どもによっては、嘘をつく、養育者の見えないところでいたずらをするなど、「こういう自分でも受け入れてくれるだろうか」と、あたかも子どもが養育者の許容範囲を確かめているような行動をとることがある。それらは、この先どんな生活が待ち受けているかわからないことに対する大きな不安感の表れであるともいわれる。

ぬいぐるみを子どもがハサミで切ってしまい…

小学校高学年で受託した谷口さん夫妻(仮名)の子どもは、当初トイレではないところで排泄の失敗をしたり、同じ色の洋服しか着なかったりした。児童養護施設では問題なくできていたので、赤ちゃん返りのような行動だと思い、受け止めていた。「この家にずっといていい」ということを伝えるとともに、一つひとつの行動を叱ることはせず、淡々と処理していくとそういった行動も収まった。

トイレ
写真=iStock.com/maruco
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鈴木さん夫妻(仮名)は4歳の子どもを受託したばかりのとき、あらかじめ用意していたぬいぐるみを子どもがハサミで切ってしまった。「物を大切にしてほしい」という気持ちが伝わるように、切ったところを縫って棚の上に置いた。それを子どもが見ていたので「けがをしたので治したよ」と言ったら、「誰がやったか知っているよ」と言ったが、「ふ~ん」と応えるだけで追及しなかった。こんな悪いことをする自分がここにいていいのかというアピールではないかと思い、叱りはしなかった。こうした対応を継続することで、徐々にそうした行動も収まっていった。