「国民民主のせい」にするのは間違っている
総選挙後の特別国会で行われる首相指名選挙で野党が結束し、野党第一党である立憲民主党の野田佳彦代表に投票すれば、野田代表を首相に担ぐ野党連立政権が誕生する。野党各党が第一回投票で自らの党首に投票しても、石破首相も野田代表も過半数に届かず、決選投票に持ち込まれる。そこで野党が結束して野田代表に投票すれば、自公政権は倒れるはずだった。
しかし現実はそう進まなかった。総選挙で躍進した国民民主党も、総選挙で敗北した日本維新の会も、首相指名選挙で石破首相には投票しないものの、野田代表にも投票しない姿勢を早々に打ち出したのだ(決選投票でも自らの党首に投票して無効票となる見通し)。
これにより、首相指名選挙は石破首相と野田代表が決選投票に進み、石破首相が過半数を獲得できないものの野田代表を上回って勝利し、「少数与党政権」として続投する方向が固まった。
立憲支持層には「国民民主党が野田代表に投票しないのは、政権交代を期待して自公を惨敗させた総選挙の結果を裏切るものだ」という声がある。私の見解は異なる。自公が過半数を割りながら、政権交代を実現させることができなかった最大の責任は、野党第一党の立憲民主党にある。
立民は「政権交代こそ最大の政治改革」と訴えたが…
野田代表は総選挙の「目標」として、①自公を過半数割れに追い込む、②立憲が比較第一党になる(自民の議席を上回る)――を挙げ、その結果として「政権交代を実現させる」と訴えた。「勝敗ライン」という言葉は避けたが、この「目標」こそ、事実上の「勝敗ライン」と捉えてよい。
なぜ「政権交代が目標」と明快に言わなかったのかというと、立憲が単独過半数を獲得する可能性がほとんどなかったからだ。
立憲公認候補は10月9日の解散時点で209人だった。全員が当選しても単独過半数に届かない。公示日目前に駆け込みで比例単独候補29人を公認し「衆院過半数の233を超え、単独でも政権を担える」(大串博志選対委員長)体裁を取り繕ったが、単独過半数を狙う陣容にはほど遠かった。
野田代表は総選挙で「政権交代こそ最大の政治改革」と訴えた。現実には立憲の単独政権誕生の可能性はなかった。それでも「政権交代」を訴える以上、野党連立政権を想定して周到に準備を進めるべきだった。
それが野党第一党の責任だ。具体的には、①自公を過半数割れに追い込む、②立憲が比較第一党になる、③首相指名選挙で野党が結束して野田代表に投票する――というシナリオを野党各党と共有しておく必要があったのだ。