金利上昇で危うさが増すパワーカップル

しかし、このパワーカップルの購入には、危うさが潜んでいる。先のSUUMOリサーチセンターの調査によると、新築マンション契約者全体の自己資金比率は21.7%に対して、共働き世帯では13.2%に低下し、なかでも共働きで世帯年収1000万円以上の世帯では9.9%と1割を切っているのだ。

これでは、夫婦どちらかがケガや病気になったり、リストラなどに遭ったりすれば、たちまち返済が困難になり、ローン破綻に陥るのではないだろうか。自己資金を2割以上入れていれば、物件価格が多少下がっても、売却すればローン残高を一掃することができる可能性が高いが、1割以下ではそうはいかないことが多い。売却可能価格以上のローン残高が残っているので、売るに売れず、といって一人の収入ではとても返済できる金額ではないので、返済の延滞から、最悪の場合、競売に付されてしまうことになる。

まして、2024年秋に至って、住宅ローン金利の本格的な上昇が始まっていて、リスクはますます高まっている。パワーカップルへの不安は尽きない。住宅ローンを融資する銀行のパワーカップルに対する審査も厳しくなるのではないだろうか。

不動産価格の上昇のイメージ
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注目度高まる“パワーファミリー”とは

住宅業界としては、いつまでもパワーカップルの存在に依存しているわけにはいかないわけだが、そんななかで注目されているのが、“パワーファミリー”だ。大手不動産会社の社長は“パワーファミリー”についてこんなふうに語っている。

「共働きではないが、優良企業の管理職などとして高い年収を得ており、若いうちに通勤に便利な場所でマンションを購入していて、そのマンションの資産価値が大幅に上昇している。それを売却して、一回り広いマンションに、よりグレードの高いマンションに買い替えが可能になっている。なかには、2度の買い替えを行う人や、子どもの成長などに合わせて、2台のクルマを停めることができるゆとりある戸建住宅への買い替えを行う人もいる」

手持ち物件の売却によって自己資金が豊富なので、パワーカップルのように自己資金が1割以下といったリスクはなく、自己資金割合が5割を超えることもあるので、金融機関は積極的に融資してくれる。不動産会社としても、審査にひっかかるリスクがないので、安心して買い替えを進めることができるわけだ。