人生の先輩「いまから楽な道を選んでどうする」

1974年の暮れ、広野は名古屋の伏見にある老舗料亭「鯛めし楼」を訪れた。ビジネス街にひっそりと佇み、舌の肥えた名古屋人へ伊勢湾の真鯛をふるまう名店である。

「慶應大の2年先輩で、慶應のゴルフ部のキャプテンだった鈴木晴視さんが、そこを経営していたんです。ジャイアンツ時代に知り合い、名古屋に行った際は、必ずお店を訪れていました。名古屋の財界のことをよく教えてくれる人で、『困ったらいつでも来い』と。信頼していた人でしたから、彼に進路について相談に行ったわけです」

開店前の客がいない店内で、鈴木は鯛めしをふるまいながら広野の進路に助言した。