日経新聞が報じた「衝撃的なスクープ」
偽情報による影響力工作は日本も当然に無縁ではなく、10月3日の日本経済新聞で衝撃的なスクープが報じられた。具体的には、「沖縄独立」を煽る偽情報をバラまく中国の情報工作アカウントが見つかったというものだ。
記事によると、「琉球属于中国,琉球群島不属于日本!」(琉球は中国に属し、日本に属してはいない!)「根据波茨坦宣言,琉球是中国領土!」(ポツダム宣言によると、琉球は中国の領土だ!)といった中国語付きの動画が、2023年からSNS上で拡散され続けているという。同動画では、東京・渋谷の街を歩くデモの様子を「沖縄独立デモ」だと紹介。デモは沖縄の住民によるものだと説明しているが、実際には米軍基地に反対するデモなどの動画をつなぎ合わせたものである。
こうした投稿について、イスラエルのSNS解析企業サイアブラが提供するAIツールを用いて日経新聞が分析したところ、「沖縄独立」の偽動画を転載(コメント付きの投稿)した全431アカウントのうち半数にあたる約200が「工作アカウント」だったと判明したという。
なぜ習近平は「中国と沖縄の関係」を強調するのか
背景には、習近平国家主席が昨年6月、中国と琉球王国時代の沖縄との深い結びつきを強調して言及したことがある。この発言以降、中国のネット上には「琉球は中国のものだった」とする言説が盛んに見られるようになった。
台湾問題をめぐる日本の関与を警戒する中国にとって、こうした情報工作には、沖縄を新たな「対日カード」にしたいという狙いが透けて見える。
また、2020年米国大統領選挙に影響を与えることを目的とした外国(ロシア、中国など)による情報工作はよく知られているが、日本でも当時はSNS上でさまざまな陰謀論が流布されていた。米国ではロシアに近いとされるジャーナリストのTwitter(当時)アカウント上に注意喚起が表示されることもあったが、日本のTwitter情報ではそのような対策は行われず、ほぼ野放し状態であった。
今後、衆議院議員選挙・参議院議員選挙などで、外国によって大規模な偽情報が流布される可能性は十分にある。また、沖縄・北海道などの特定の地域を対象としたプロパガンダには常に警戒すべきだ。原発に対する誤った風評被害やワクチンに関する陰謀論なども同様だ。そのため、日本政府は偽情報を常時監視する最先端のシステムを早急に導入・強化し、国民に対して注意喚起情報を与える体制を構築することが望ましい。