筋力アップには「積極的に休む時期」が必要

一方、多くのスポーツでは、筋肉のパワーとスタミナの双方が必要です。そのため、トップレベルのスポーツ選手は、「期分け(ピリオダイゼーション)」という考え方を導入しています。

これは、最大筋力型の筋力トレーニングと筋肥大型の筋力トレーニングを異なる時期に実施するという方法です。図表2には、その代表的な例を示しました。

シーズンが終了すると、一旦、練習から離れ、心身の回復を図ります(これを積極的休息期といいます)。この時期には、普段と異なるスポーツを行っても良いでしょう。心身ともにリフレッシュした後に筋肥大期を設け、筋肥大型の筋力トレーニングを1~2カ月間実施し、筋肉量を増加させます。

その後、最大筋力期を設け、最大筋力型のトレーニングを実施し、最大筋力やパワーを十分に高めた状態でシーズンに突入するという計画が理想です。1年間を週ごとに細分化し、目標とする試合(シーズン)から逆算して、その時期で行うべきトレーニングを実施するという計画性が必要となります。

「高重量×低回数」の後には「低重量×高回数」が効果的

それでは、「筋肉のパワーとスタミナを同時に鍛えたい」場合にはどうすれば良いでしょうか。私がオススメするのは、「ホリスティック法」と呼ばれる方法です。この方法では、最大筋力型による筋力トレーニングを実施した直後に、軽い重量で高回数での運動を1~2セット付け加えるという方法です。

図表3に示したように、1~5セット目までは最大挙上重量の85~90%程度の重い重量(少ない回数)での運動(最大筋力型)を実施した直後に、6セット目は重量を一気に軽くし、最大挙上重量の30~50%の重量で20~50回程度の運動を実施します。

ホリスティック法の効果を調べた研究では、最後の6セット目の運動を行うことで成長ホルモンが大きく増加することが明らかになりました。また、4週間のトレーニング効果を検証した研究では、筋肉のパワーとスタミナが、同時に増加することも示されました。これに対して、通常の最大筋力型を用いた場合には、筋肉のスタミナは増加しませんでした。

一方、最後に実施する6セット目の運動の重量は「軽いほど良い」わけではありません。たとえば、6セット目に最大挙上重量の20%という極端に軽い重量を用いて約80回の反復を行った場合、最大挙上重量の30~50%の重量を用いた場合と比較して、成長ホルモンが大きく増加することはありませんでした。

重い重量での最大筋力型による筋力トレーニングの最後に、軽い重量で高回数反復を行うことで筋肉に強い刺激を与える「ホリスティック法」、試してみてはいかがでしょうか?