日本の学校教育の問題は何か。実業家の堀江貴文さんは「実社会で生きていく力を育てていない」という。『僕らとビジネスの話をしよう。新時代の働き方』(大和書房)より、登山者用地図アプリを提供するYAMAPの創業者・春山慶彦さんとの対談の一部を紹介する――。(第1回)
2人の男の子が丘を登り、一方がもう一方を助けるために手を差し伸べるコンセプトイメージ
写真=iStock.com/ImagineGolf
※写真はイメージです

410万人が使う人気アプリはこうして生まれた

――春山さんはアラスカ大学を中退して帰国。雑誌『風の旅人』編集部に勤務し、その後独立。2013年にYAMAPをリリースしました。

【春山】YAMAPをリリースしようと思ったきっかけは、2011年の5月に大分県の九重連山を歩いていた時でした。携帯電話の電波がつながらない場所でしたが、ふと地図アプリ(グーグルマップ)を開いたんです。

すると、真っ白い画面上に青い点が映っていただけで、「やっぱり、電波が届かないとスマホは使えないんだなあ」と思いました。その1時間後くらいにまた地図アプリを開いた時、真っ白な画面は変わらないんだけど、青い点だけは移動していたんです。

そこで「そうか。自分の位置情報は宇宙にある人工衛星から拾っているので、山の中であろうと海外であろうと、受信できるんだ。でも、地図データは携帯の電波が届かないと表示できない。だったら、地図データをスマホに前もって保存していれば、スマホを登山用GPSとして使えるんじゃないか」と気づいたんです。

そしてYAMAPを作り始めました。僕はそれまでウェブサービスとかアプリケーションサービスに関わったことはまったくなかったんですが。

【堀江】でも、そういう人が思いつくんですよ。

日本人の最大の課題

【春山】YAMAPを作ろうと思ったもうひとつのきっかけは、同じ年の3月11日に起きた東日本大震災と福島第一原子力発電所の事故です。とんでもない時代に私たちは生きていると思いました。1945年に人類で初めて原爆が落とされたこの国で、66年後、今度は自分たちがつくった仕組みで被曝し、故郷を離れざるを得ない人たちがいる。けれど、起きてしまったことをなかったことにはできない。

この経験を自分なりに咀嚼し、想いを事業に込めて社会に届けることはできないかと考えました。いろいろ考えた末、日本人の最大の課題は身体を使っていないことにあると思うようになりました。

農業や漁業、林業などの第一次産業に従事している人たちは、日本の就労人口の中で200万人を切っています。これはつまり、日常的に自然の中で身体を動かしている人たちが減っているということです。自然から離れがちになってしまったために、自分たちにとって大切な風土や環境に対して鈍感になってしまっている。

では、どうやったら、都市と自然をつなぐことができるか。都市に住む人たちが自然や風土を知るきっかけをつくるにはどうしたらよいのか。そう考えた時、登山やアウトドアという回路だったら、都会にいる人たちが自然に足を運ぶきっかけがつくりやすいし、身体を動かせるし、多くの人が自然を楽しむ機会を今以上につくることができるのではないか。そう思ってYAMAPを立ち上げました。