旅で培った力が社会の成績に直結する理由

旅で培った力が、想像以上に中学受験の勉強に生かされたというのは、旅行ジャーナリストの村田和子さん。息子の悠さんは、現在京都大学大学院でAIの研究をしています。

悠さんは、お母さんと一緒に全国を旅し、9歳で47都道府県を踏破したそうです。そんな悠さんが中学受験の勉強を始めたのは、小学5年生の3学期。ほぼ塾には通わなかったものの、国立大附属中に加え、神奈川県の最難関校の一つ栄光学園に合格したのです。

旅の経験は、特に社会科で生かされたといいます。社会は暗記科目で、膨大な知識を頭に入れなくてはならないのですが、すでに旅を通して頭に入っていたので、あとはそれを整理していくだけ。

また、たくさんの史跡を訪れていたこともあり、歴史上の出来事はリアルな情景を思い浮かべながら頭に入れることができました。旅した場所のことが授業で出てくるので、うれしくなって勉強したくなる。そんな好循環が生まれたのです。

奈良県の郡山城跡
写真=iStock.com/SeanPavonePhoto
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いざ受験となったら、最後は「体力とへこたれない力」が大事です。それは短期的には培えないものなので、小さいときからの経験の積み重ねが必要です。

脳科学的にも、早寝早起き朝ごはんで、規則正しい生活をすることのほうが、皆さんが思う以上に子どもの脳によい影響があることもわかっています。焦って低学年から受験塾に入れる必要はありません。

ただ、お母さんたちとお話ししていると、「学童がわりに塾に行かせたい」と考える方も増えているようです。

もし低学年から塾に入れるなら、受験のためではなく、お子さんの好きなこと・得意なことを伸ばせるような環境を与えるという方向で考えてはどうでしょう。最近では、探究系の塾もたくさんできています。

塾で「一つ下のクラスに移りたい」という子供の訴えへの回答

長い中学受験の道程は、当然山あり谷あり。いろんなことが起こります。

うまくいっているときはいいですが、成績が伸び悩む、やる気が出ず勉強しない、塾に行くのを嫌がるなど、困ったことが必ず起きます。

そんなときに、頼りにしたいのは塾の先生ですよね。でも残念ながら、思うようなサポートを受けられないこともあります。

難関校狙いの大手塾に通っていたお子さんを持つNさんのお話です。

子どもが6年生の夏を迎えたときのこと。当時在籍していた最上位の志望校別クラスから一つ下のクラスに移りたいと、お子さんが訴えるので、塾に相談したそうです。

子どもがクラスを移りたいと言った理由は「算数で思うような成績が取れず、周りの子との差が広がって、つらくなってきたから」。

本人いわく「塾の先生からは、頑張れば大丈夫だから諦めるなと引き止められたけれど、みんなライバルという環境の中でプレッシャーを感じながら通い続けるのは限界だった」そうです。

Nさんは子どもとの話し合いを踏まえて相談しましたが、塾の先生からは「まだ可能性があるのだからクラスは変えないほうがいい。もう少し様子を見ましょう」という一般的な回答しかもらえませんでした。結局、子どもの様子から家庭で判断して、一つ下のクラスに移ったのです。

あとで娘さんは、「あのとき、もし、パパやママから『もったいないから続けなさい』といわれていたら壊れていたかもしれない」と正直に語ったそうです。最終的に、「第一志望校」に合格でき、クラスを変えたことにも満足しているとのことでした。