新聞の夕刊が次々と姿を消している。全国紙の部数は右肩下がりだ。ノンフィクションライターの石戸諭さんは「全国紙はこの20年で発行部数はほぼ半減し、業績が回復する兆しも見えない。新聞記者がネットに影響され、事実よりも“刺激の強い言葉”を優先するようになりつつあることが衰退の一因ではないか。事実確認の規律を守り、ジャーナリズムの基本に基づいた『強い』記事を出し続けてほしい」という――。
毎日新聞社東京本社=2023年3月16日、東京都千代田区
写真=時事通信フォト
毎日新聞社東京本社=2023年3月16日、東京都千代田区

「全国紙」のビジネスモデルは終わりが近い

「新聞は商品なり」

私がかつて所属した毎日新聞を大きく発展させた戦前の名経営者、本山彦一の言葉だ。新聞はいよいよ危うい。日本新聞協会によれば、1世帯あたり部数はついに0.49部にまで下がり、毎日新聞は富山での配送休止を、日本経済新聞の一部九州エリアの夕刊休止という発表も続いた。

全国紙の発行部数は悲惨な状況にある。文化通信が報じた日本ABC協会の新聞発行社レポート(2024年上半期1~6月の平均販売部数)によると、2000年代初頭には1000万部超を誇った読売新聞は約595万部、朝日新聞は約343万部、毎日新聞は約154万部とゼロ年代と比べて半数以下になった。電子版が比較的好調な日本経済新聞も、ゼロ年代と比べて半数以下の138万部となっており紙版の減少分を代替するまでには至っていない。

「新聞紙」という商品の市場は拡大の兆しはなく、「全国紙」のビジネスモデルは終わりに近づいてきている。反マスコミ論者にとってみれば、朗報中の朗報といったところだろうか。

問題の多いマスメディアは潰れてもかまわない、というのは一つの筋だが私には喜ばしいこととは思えない。インターネットメディアが順調に発達して、人材育成まで担えるようになれば新聞が無くなったところでまったく困らないと豪語できたのだが、現実は紙以上にネットメディアの方がダメージは大きい。