資産凍結の有効性

第二に、プーチン大統領個人やその権力を支えるオリガルヒなどが保有する資産を凍結し、彼らの個人資産を動かせなくする手段もある。これにより経済的な苦痛を与え、制裁解除しなければ自らの富を失うという状況を作り出すことで、プーチン大統領への忠誠心を失わせる、あるいはプーチン大統領が制裁解除に向けて動き出す可能性を高めるという方法である。

しかし、プーチン大統領を支えるオリガルヒの富は、元々プーチン大統領によって庇護されていたものであり、むしろプーチン大統領の意向に反するような要求をすれば、その富が奪われる可能性が高い。

過去にもプーチン大統領と対立した石油会社のユーコスの社長であったホドルコフスキーは財産を没収され、今は亡命生活を余儀なくされている。プーチンに異議を唱えたオリガルヒの中には、ビルから転落するなどして不審な死を遂げた例も複数ある。

第三に、金融制裁、特にSWIFTからロシアの銀行を切り離し、国際的な決済を困難にすることで、ロシアが輸出する原油や天然ガス、小麦などの収入を得難くすることだ。外貨不足でロシア経済が破綻し、戦争継続ができなくなることを期待することもできる。

ロシアルーブル
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金融制裁の効果は限定的

しかし現実は、第三の相互依存の罠にかかっている状態で、西側諸国はロシアの原油や天然ガスへの依存が続いており、ロシアに対して経済制裁をかけながらも、ロシアから原油や天然ガスを調達し、その代金を支払っている。

またロシアの原油や天然ガス、穀物や鉱物に依存しているのは西側諸国だけでなく、中東やアフリカ諸国などもロシアに強く依存している。そのため、彼らが銀行を通じて決済できなくなることは、彼らにも経済的な痛みを与えることになる。第三の相互依存の罠にかかっている以上、金融制裁は中途半端なものになり、その効果は限定的にならざるを得ない。

第四に、これまでロシアの原油や天然ガスの多くを調達していた欧州各国や日本が原油や天然ガスの禁輸をすれば、ロシアの国家収入を相当程度減らし、戦争を継続することが困難になるのではないかと考えられる。

欧州と日本はロシアからの石炭の輸入停止を決定しており、原油に関しても欧州は海上輸送による原油の調達を禁じ、2022年末までに開戦前の90%に減らすことを決定し、実行した。