老人ホームの入居者を2つのグループに分けた実験

これについてエレン・ランガー教授は『ハーバード大学教授が語る「老い」に負けない生き方』(桜田直美訳、アスペクト)で次のように述べている。

「私は同僚のジューディス・ロディンと共同で、老人ホームの入居者を対象にしたある実験を行った。老人たちを二つのグループに分け、一つのグループには、いろいろなことを自分で決めてもらうようにする。たとえば、訪問客と面会する場所や、ホームで上映される映画を観るかどうか、観るとしたらいつ観るか、といったようなことだ。また、このグループの老人たちは、自分で世話をする植木を選ぶことができる。植木を置く場所や、水やりの時間、水の量も、自分で決めることになる。

もう一つのグループの老人たちには、いつも通りの老人ホームの生活を送ってもらった。自分で何かを決めるような指示はしていない。彼らの部屋にも植物はあるが、水やりはいつも通りスタッフの仕事だ。(中略)実験を始めてから一年半がたち、自分で決めるグループと、いつも通りのグループの間には、大きな違いが見られるようになった。自分で決めるグループのメンバーのほうが、より元気があり、活動的で、頭の働きもしっかりしている。(中略)自分で決めるグループから出た死亡者は、いつも通りのグループの死亡者の半分にも満たなかった」

年配の男性が居間を歩くのを手伝う看護師
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自ら決定するほど人生の幸福感は高まる

このように自分の人生を自分で決めて選択していれば、幸せになれるだけでなく健康にまでなれる。だからどんなに老いて体が弱っても、人生の舵はできるかぎり自分で切ったほうがいい。自ら選択し決定することが増えるほど、人生の幸福感や達成感、自尊感情は高まるからだ。

私はまだ64歳だけれど、パーキンソン病によって体が少しずつ固まりつつある。前へ進むには、ひとまず両足でまっすぐ立つことが必要なのに、病気のせいでそれさえおぼつかない状態だ。1歩足を踏み出したはいいが、次の1歩を出す前にバランスを崩して倒れてしまうことも多い。最後に両足で颯爽と走ったのは、いつのことだろう。また腕や指も思うように動かないため、時が経つにつれできないことが1つ2つと増えてきた。最近は他に方法がないのでヘルパーの手もかなり借りている。人に頼らざるを得ない身の上は決して愉快ではないけれど、そうするしかないのが現実だ。