民間全体のボーナスが大きく増えたわけではない
国家公務員の2024年の夏のボーナス(期末・勤勉手当)は、2年連続の増加となった。管理職を除く一般行政職(平均33.4歳)の平均支給額は約65万9400円と2023年夏に比べて3.5%、金額にして2万2100円増えた。2023年の人事院勧告に基づく法改正で給与が増えたことから自動的にボーナスも増額となった格好だ。
国家公務員の給与は「民間並み」を前提に毎年夏に人事院が引き上げ率を決めている。ボーナスは夏冬ともに2.25カ月分と決まっており、給与が上がるとボーナスも増えるため、業績に応じてボーナスが出る民間とは大きく違う。
2024年夏の民間企業のボーナスは、経団連が集計した大手企業の場合、平均98万3112円となり、過去最高額を記録した。2023年夏に比べて4.31%アップだった。公務員の賞与の伸びは3.5%と民間に比べて低く見えるが、これは大手企業に限った話で、民間全体のボーナスが大きく増えたわけではない。
帝国データバンクが行ったアンケートでは、回答した1021社のうち85%の企業が「賞与あり」としたが、「賞与がない」ところも10%あまりあった。賞与があってひとりあたりの支給額を増額した企業は全体の39.5%、賞与があっても金額が変わらないところが34.2%、減額したところが11.3%あった。
「本省課長級以上」の賞与は「大手企業の部長級」並み
つまり、民間でも賞与が増えているところは全体の4割にすぎないのだ。業績に応じて賞与額を決めている民間企業に対して、公務員は一律全員が増額となっているから、やはり「公務員は恵まれている」という声が民間から上がるわけだ。
賞与はあるが金額が去年と変わらないという会社は、物価上昇を考えれば、実質的にマイナスになっている。増額した4割も、中小企業の場合、増加率は1.7%にとどまっているという結果になっており、3%を超える物価上昇が続く中で「実質賞与」もマイナスになったところが大半だと見ていいだろう。
それに比べれば国家公務員の3.5%という増額率はほぼ物価上昇率を上回っており、実質でも増額している。ちなみに政府が公表する公務員賞与の金額は、管理職を除く一般職だけの金額で、民間企業は管理職が含まれていることには注意が必要だ。本省課長級以上の賞与は大手企業の部長級に遜色ない金額が支給されている。ちなみに特別職と言われる公務員トップの賞与は、最高裁長官の579万円だった。
国家公務員はよほどの不祥事を起こさなければ解雇されないし、ほぼ一律に昇進昇格していく。これに伴って給与も増え、賞与も自動的に増えていく。これは国がどれだけ財政赤字に陥ろうが、税収が増えようが関係ない。あくまで基準は「民間並み」をベースとした人事院勧告がベースなのだ。