「日本株買い」に向け各国が動き出している

欧州経済を概括すると、南欧諸国は米国からの観光客の増加などでそれなりに安定している。一方、ウクライナ紛争によるエネルギー資源などの不足、中国経済の停滞によりドイツやフランスなど欧州の主要な国の景気は厳しい。6月の欧州議会選挙でEUの政策方針に懐疑的な極左・極右の政党が議席を伸ばしたことはそれを示唆した。欧州の主要な投資家にとって、円安もあり日本株は割安に映っただろう。

一方、4月、米国など北米勢は日本株を売りに回った。5月はアジア勢が日本株の保有を減らした。3月に日本株が上昇し、その時点での最高値を付けた。米国ではAI業界の成長期待も高まり、一部銘柄の割高感も強まった。相場の調整を警戒して米国やアジアの主要投資家は日本株の持ち高を減らし、利益を一部確定しただろう。

6月に入って以降、米国やアジアの投資家は日本株を買い戻したようだ。米国では、主要国の株式市場の資金配分比率で、日本株の割合を相対的に高く設定するファンドマネージャーもいる。日本株に強気になる中国の個人投資家が増えているとの報道もあった。シンガポールでは、政府系投資ファンドが日本株投資チームの陣容を拡大しているという。

海外勢が期待する日本経済の「成長要素」とは

海外の投資家が日本株を買う要因の一つは、長い目でわが国経済の成長が期待できるからだろう。足許の日本経済は、全体として緩やかに持ち直しつつある。強弱感はあるが民間企業の設備投資は加速している。

半導体工場やデータセンターの建設は増えている。製造業と非製造業の両分野で省人化関連の投資も伸びている。業種別に、自動車および部品、工作機械、石油化学、運輸、情報通信、インバウンド需要の増加で飲食・宿泊など広範囲に設備投資の増加が予想される。それは、中長期的なわが国経済の成長期待を高めるだろう。

相場を牽引する業種にも変化が出始めた。年初から3月上旬までは、主に半導体の製造装置などAI革命から業績拡大が期待できる銘柄が選好された。6月18日、エヌビディアの時価総額はマイクロソフトを抜いて世界トップになった。そのあたりから、エヌビディアの投資判断を引き下げるアナリストが出始めた。自社株を売る米IT先端企業の創業経営者もいる。