熊本のTSMC、北海道のラピダスにも追い風

GPU以外の半導体分野で成長の期待は高まっている。メモリーチップの分野ではデータの転送速度が速い広帯域幅メモリー(HBM)の需要増加期待が高まった。海外の株式市場では韓国のSKハイニックス、米マイクロン・テクノロジーが買われた。DRAMの需要回復期待も高まった。

それは、熊本県で第3工場の建設を検討しているTSMC、北海道で工場を建設しているラピダスに追い風となるだろう。国内での半導体生産の増加は、電子部品や半導体関連素材メーカー、発電やインフラ関連の事業を運営する重電メーカー等の業績期待を高める。

業態の転換や政策保有株の売却などによって、資本の効率性を高めようとするわが国の企業も増えた。プロの人材や経営者を登用して、AIなど先端分野での競争力を高めようとする企業もある。そうした変化に着目し、日本経済の成長期待は高まったと考える海外の投資家は増えただろう。

半導体製造用装置
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今後の日経平均株価の行方は荒れ模様?

7月5日の取引終了時点で、日経平均株価に採用された銘柄の平均PER(株価収益率、予想ベース)は17.28倍に上昇した。世界の主要株式市場の長期的なトレンドとして、PERは14~17倍が適正な水準といわれている。米国株(ナスダック100インデックスで約30倍、S&P500指数で約23倍)ほどではないが、日本株は割安と言えない水準に上昇した。

割安感が乏しいことを踏まえると、当面、日本株の上値は重くなることが予想される。今すぐではないだろうが、金融引き締めの効果などにより米国の景気が緩やかに減速する恐れもある。

不動産バブル崩壊で中国経済の停滞懸念は高まった。世界経済を支えた米国経済の成長率が低下すれば、世界経済全体で成長率は下振れるだろう。ここから先、わが国の幅広い業種で業績が拡大するとは考えづらい。

そうした警戒感が高まると、日本株を買った海外の投資家は一部の持ち高を縮小することになるだろう。それに伴い、日本株が調整するリスクはある。11月の米大統領選挙という不確定な要素もある。米欧の金融政策や政治動向で、相場調整リスクが上昇することも考えられる。6月中旬以降の上げ方がやや急ピッチであったため、上げ下げともに相応の値幅も出やすくなるかもしれない。