40歳独身のAさんのケース

心身が健康であれば、医療費や介護費用はかかりませんし、働ける期間が延びることで収入も増えるため、健康はある意味で資産といえます。では、健康にはどれだけの経済的価値があるのか、試算してみましょう。

健康とダイエットのイメージ
写真=iStock.com/AtlasStudio
※写真はイメージです

40歳独身、35年ローンで4000万円のマンションを購入したばかりのAさんのケースを例に考えてみましょう。この時点での貯金額は500万円です。

まず、Aさんが日頃から食生活や体調管理に気を付け、70歳までスポーツジムで定期的に運動をしていた場合のパターン①から。

このケースのAさんは健康を維持できていたため、60歳で定年し、2000万円の退職一時金を得たあとも継続雇用で65歳まで働きました。65歳からは年金受給を機にリタイア。70歳以降は徐々に老化現象が出始めたため在宅の介護サービスを受け、加齢とともに要介護の区分は上がっていったものの、大病はなし。経済的負担はそこまで大きなものにはなりませんでした。

85歳で他界した際には850万円の預貯金が残り、生涯を通じてのトータルは黒字だったことになります。

次に、40代から高血圧症を抱えていたパターン②では、40代から通院していたものの、55歳で脳卒中を発症してしまいます。手術で一命はとりとめましたが、後遺症によって配置転換となったことで収入は減少。その後も順調に働けたとはいえず、57歳で早期退職を余儀なくされたことで退職一時金は1400万円にとどまりました。また、早期退職して収入がなくなったことから年金を60歳で繰り上げ受給したため支給額は24%減少。

現役時代から持病があったことや運動不足だったためか、55歳のときに発症した脳卒中に続き、75歳で脳血管性認知症を発症し、85歳で亡くなりました。脳血管性認知症は薬物療法や在宅介護の費用が高額になり、75歳から1000万円以上の支出を余儀なくされています。収入の低下と医療費が大きく響いたことで、他界した際の預貯金はマイナス4002万円と、大幅な赤字となってしまいました。

2つのケースでは、預貯金に5000万円近い差が生まれています。「健康の価値は5000万円」というのは言いすぎかもしれませんが、健康も立派な資産だということがわかります。

【図表】「健康」の価値は5000万円⁉