「12億円豪邸」を取材したフジ・日テレが“出禁”?

大谷をけなしているのではない。大谷は漫画の主人公を超えた存在になったと私も思う。私が読んできた野球漫画『スポーツマン金太郎』(寺田ヒロオ著、講談社)『巨人の星』(川崎のぼる著、同)『ドカベン』(水島新司著、秋田書店)の主人公たちでも、その活躍は現在の大谷より控えめである。

大谷がこの活躍をあと5年続けられれば、彼は大リーガーのレジェンドになることは間違いない。

ところで、その大谷をめぐって、日本のテレビ局2社が“行きすぎた報道”をしたとして、ドジャース球団から取材パスを取り上げられたという疑惑が話題になっている。

大谷の12億円豪邸をフジテレビと日本テレビのワイドショーが、マンションの前で中継したというものである。

たしかに、2局のワイドショーの報道の仕方に問題があったのは間違いない。

自宅を公にされることで、試合中は1人でいる妻に危害が及ぶかもしれない。パパラッチまがいのファンたちが大挙してマンションの前に押し寄せ、「ここが大谷さんの家よ」と大騒ぎするかもしれないという、大谷側の心配は理解できる。

だが、大谷側の激怒に震え上がり、テレビ局の社長が会見で謝罪までしたことは、私は「やりすぎではないか」と思わざるを得ない。

もはや「マネーゲーム」と化している大谷報道

週刊現代』(6月29日・7月6日号)によると、大谷を扱うことで視聴率が3%上がり、大谷を起用している社のCMも入る。巨大コンテンツと化した大谷翔平をめぐる「マネーゲーム」は激しさを増しているそうだ。今や日本人最大のスーパースターとの関係修復は、テレビ局の浮沈がかかっているというのである。

だから土下座してでも大谷との関係を修復せよと、上から厳命されているようだが、これではジャーナリズムなど入り込む余地などまったくない。取材対象に媚びへつらうだけが記者の仕事なのか。

大谷がプライバシーを守りたいという気持ちはわかる。だが、12億円の豪邸や26億円ともいわれるハワイの別荘がどのようなものなのかを知りたいと思うのは、人間の“本能”である。読者、視聴者の欲求にこたえるのはメディアの重要な役割でもあるはずだ。

ハリウッドの有名俳優たちは、自宅を撮られメディアに出てしまったことで、その社を出入り禁止にしたり、取材パスを取り上げたりするのだろうか。

もしそのようなことになれば、同業他社はその俳優の報復の仕方に、「やりすぎではないか」と結束して異を唱えるのではないだろうか。

小室圭さんと秋篠宮家の眞子さんがニューヨーク・マンハッタンのやや物騒な地区のマンションに移り住んだ時、外国メディアまでがパパラッチのように四六時中辺りをうろうろし、日本人観光客が何人も物見遊山に訪れた。だが、この国の大手メディアの中で、小室夫妻のプライバシーを侵害している、2人が暮らしているところを特定できるような書き方は慎むべきだと警告した社が、はて、どれくらいあっただろうか。