通称「ゼロヨン」はガラケーの傑作として世界を変えた
「街中で作ったものが役に立っているのを見て『よかったね』。それで終わりなんですよ、実際。ゼロヨン(J-SH04)は通過点でしかない。まだまだ画質も悪かったし、写真の写りも悪かった。改善すべき点がものすごくありました。『やったぞ!』なんて思っていなかった」
完成はしたが、ゴールではない。次はもっと違うもの、もっとすごいものを作りたい。その思いは山下も同じだった。
「私にとって、ゼロヨンは問題提起の機種です。作ってみて、次に何をしなければならないかが明確になりました。ゼロヨンは終わりじゃなくて、始まりですよね」
発売から20年以上経って、山下はゼロヨンで写真を撮ってみた。撮った画像を液晶画面で確認してつい本音が出た。「ひどい画像やな」。何年経っても、懐かしさだけで携わった製品を見ることができないのは、技術者の宿命なのかもしれない。