メンバーが才能や情熱を注ぎたいと思っていること、あるいはメンバーがそのように取り組めそうなことを察知し、その実現に向けて先回りし、環境を整備しておくという役割である。産業時代のマネジャーから考えれば、さらに大きくかけ離れた役割だということができる。
メンバーのボイスを発見する、信頼を築く、意義を見出す、システムを創造する、エンパワーメントを進めるといった一連のステップは、役割が先に進むごとにサーバントの色合いを増している。
「第8の習慣」は、偉大なリーダーをめざし、偉大なチームをつくりあげることに目的が置かれている。しかし、そのことは誰の目にもとまる劇的な変化とはかぎらない。
コヴィー博士は、その位置づけを「トリム・タブ」にたとえて説明する。トリム・タブとは、船の舵についた仕掛けのことで、大型船の舵を動かすときは、小さなトリム・タブを操作し、テコの原理を応用してわずかな力で舵本体は大きく角度を変えていく。わずかな力で劇的な変化をもたらすための仕掛けである。
コヴィー博士は、これからのリーダーに組織内でトリム・タブになれと呼びかけている。自分自身が小さな変化を起こし、メンバーや周囲の人たちに影響を及ぼし、そのエネルギーがしだいに組織全体まで広がっていくというイメージである。
産業時代から情報・知識労働者の時代へ移り変わる激流の中では、ほんの小さなきっかけがもとで、劇的な変化が起こる可能性は十分にある。組織にいる誰もが自らリーダーシップを発揮することで、大きな渦を起こすことができるだろう。
リーダーとは、上から与えられた役職ではなく、あくまでも選択肢の1つである。自ら選択することで、人はリーダーシップを発揮し、リーダーとなるのである。