震災発生後6年たってから認定されたケース
ご遺族は家族を亡くした心理的な負担のなか、亡くなるまでの事実関係を整理して、災害と死の因果関係を証明する申請書を作成しなければなりません。それがいかに大変な作業か実感しました。
同時に、仮設住宅に入居したからといって、災害の影響がなくなるわけではないという事実に気づかされた体験でもありました。
何よりも被災した人は、避難所や仮設住宅での暮らしが長期化するほど、不安と絶望感にさいなまれます。その意味でも、いまだに瓦礫や倒壊家屋が片付いていない珠洲市や輪島市では、早く復旧の道筋を示すことが重要になると思います。
――今回の能登では、発災後間もない事例の認定が多いようです。
時間を経てから災害関連死が発生するリスクを考慮し、支援を続ける必要があります。 私がたずさわったなかでは、発災後6年後に災害関連死に認定された事例があります。
「時間の経過がすべてを癒やす」とはならない
その女性は、3.11で被災した直後、避難所の運営などにも積極的にかかわっていました。被災者でありながら、高齢者や要配慮者のサポートを買って出て、周囲の人たちにも頼りにされていました。
夏に仮設住宅に入居した時期から「隣の家の音が気になる」「天井を人が歩いている気がする」「誰かが家に入ってきた」……と家族に訴えるようになりました。
家族が調べてみると仮設住宅に人が入った形跡はないし、隣の生活音もさほどではなかった。家族は女性が落ち着くなら、と玄関に人感センサーを設置したり、自治体の職員に相談して流失した自宅近くの仮設住宅に転居したりしました。精神科にも通院しましたが、良くなかったかと思うと、また症状があらわれる……その繰り返しでした。
その女性は、震災をきっかけに心の不調に悩まされて、6年後に復興公営住宅に転居後に自死してしまった。
――時間の経過とともに、災害の影響は薄れていくわけではないのですね。
時間が経過しても復興や復旧から取り残されている人は少なからず存在するということです。そうした視点を持ち、被災地の復興について考えなければなりません。