来る客層を「選んだ」
スタバのブランディングを考えるときに、この「選民意識」は一つのキーワードになりうる。実際にスターバックスは、その歴史の中で、客層の「選択と集中」を繰り返してきた。
その顕著な例が「フラペチーノ」の導入だ。今ではスタバを代表するメニューの一つで、月替わりのフラペチーノは日本でも大人気。新しい味が出るたびにSNSを騒がせる。
フラペチーノの登場が何を変えたかというと、それはコーヒーを飲まない客層、特に若い女性が多く店に詰めかけたこと。
こう書くと、「顧客を広げた」という言い方が正しそうだけれど、それは同時にスタバに来る客層を「選んだ」ともいえる。その流れは日本でより顕著で、それまでの「喫茶店」がどちらかといえば、中高年以上を対象にした場所だったが、スタバの登場によってその客層がガラリと変わった「カフェ」が誕生した。そして実際にスタバは、どちらかといえば若い人が訪れる雰囲気の店になった(そして、おじさんが「ちょっと行きづらい……」と愚痴をこぼす場所になった)。
さらにはフラペチーノが登場する少し前から、スタバは意識して低脂肪乳や、バニラシロップやラズベリーシロップの導入を行っていた。特に低脂肪乳はカロリーを気にする女性たちから人気が高かったようで、明確に1990年代後半あたりから、スタバは、「女性」をターゲットにした政策を打ち続けていた。
価格によるブランディング
もう一つ、スタバが「選択と集中」を行っているのが「価格」である。
スタバの商品は、他のチェーン系カフェと比べて若干高い。たとえばドトールコーヒーが250円、タリーズコーヒーが360円であるのに対し、スタバは380円だ。ちなみに、ドトールの客単価が500円前後に対して、スタバの客単価は1000円前後だという話もある*。
また、安売りをしないこともスタバの一つの特徴だ。これはスタバのCEOであったジョン・ムーアが『スターバックスはなぜ値下げもテレビCMもしないのに強いブランドでいられるのか?』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)で述べており、むしろ、それを一つのブランディングにしている。これによってスタバには、ある程度日常的にその価格を払うことに耐えうる人々がやってくる。価格設定で、静かにそこに来る人を選んでいるわけである。
ちなみに、この点に関して、自分が好きな分析があるので紹介したい。