劇的に変化する米独のマーケット事情

BEV化を推し進めてきたドイツを見てみよう。

2023年まではBEVの販売シェアが伸びていたものの、2023年12月にBEVに対する補助金が打ち切られると販売は減少に転じ、2023年は自動車市場の18.4%がBEVだったが、2024年1~4月ではなんと11.8%と、劇的に減少しているのだ(データ:ドイツKBA)。

そして、今年に入って急伸しているのがHEVとPHEVで、それぞれ前年比26.4%増、28.4%増(2024年4月)となっている。減少を続けていたディーゼルも盛り返しており、前年比28.2%増となっている。

アメリカはどうか。

2023年のBEV販売は前年比60%増という激増ぶりだったが、2024年第1四半期の数字を見ると、前年比では2.6%増と若干増えているのだが、直前の2023年第4四半期に比べると7.3%の減少となっている。BEVのリーダーブランドであるテスラは、前年比13%ダウンである。一方ハイブリッドが売りのトヨタは20%増と好調である(データ:ニューヨークタイムズ/マークラインズ)。

このように、世界のBEV市場をリードしていたエリアではBEVの販売は完全に停滞、もしくは減少局面となっており、HEVやPHEVといったICEも搭載した電動車が増加しているのだ。

不都合な真実「BEVを買える人は限られる」

この理由は供給側の問題ではなく、消費者ニーズの問題である。BEVをいくら作っても、ある一定以上は消費者が買ってくれないのである。テスラも2024年第1四半期、全世界の販売台数は前年比8.5%減となっており、在庫が積み上がっているようだ(生産台数43.3万台に対し販売台数は38.7万台)。

これはよく考えれば当然のことで、現状BEVを買うことのできる人は限られるからだ。

日本に限らず、集合住宅に住んでいる人は自宅に充電設備を設置することはできず、充電施設が自宅周辺にある人も限られるだろう。また、長距離移動の多いアメリカやドイツでは出先での充電に難儀する。自宅外の急速充電設備の拡充のペースも速くない。これも当然のことで、充電サービスはビジネスとして成り立ちにくいからだ。

なぜかというと、電気代に急速充電施設の設置コストと運営コストが乗るため、家庭での充電に比べてかなり割高にならざるをえないのだ。