むしろ汚れた部屋を借りたいという人もいる

0円空き家を貸す相手は、「とにかく安く住みたい」という生活弱者です。とくに生活保護受給者や高齢者、ひとり親世帯のような収入の少ない世帯も多く、これらは専門用語で「住宅確保要配慮者居住支援法人」と総称されます。こうした生活にお困りの方に安い賃料で貸すことが多く、入居者からも自治体からも喜ばれています。

そのほかにも、住居費にお金をかけたくない人や、DIYをして自分好みの部屋作りをしたい人にも借りてもらっています。また、ペット飼育などでどのみち汚れたり破損したりしてしまうので、はじめからキレイな部屋ではなくすでに汚れた部屋、損傷のある部屋をむしろ借りたいという人もいます。

※住宅確保要配慮者居住支援法人:国土交通省が主導する住宅あっせん事業のひとつで、住宅確保要配慮者(低額所得者、被災者、高齢者、障害者、子供を養育する者、その他住宅の確保に特に配慮を要する者)の民間賃貸住宅への円滑な入居の促進を図るために生活支援等を実施する都道府県の認可する団体・法人です。

DIY
写真=iStock.com/janiecbros
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どんな人が「ボロボロの空き家」を借りるのか

また、自分で修繕や手直しができる、日曜大工が得意だ、趣味だ、という人に安く貸しています。これを「DIY型賃貸借」といいます。DIY型賃貸者とは、国土交通省が推奨している契約形態のことで、あらかじめ賃貸人(大家さん)が、入居者によるDIYを許可する契約です。賃貸人と賃借人の間でのトラブルを未然に防ぎながら、入居者が安心してDIYを楽しむことができます。

入居者のメリットとしては、自分好みの改修ができ、持ち家感覚で居住できる点、賃貸住宅なのに自由にリフォームできる点、そして、退去時に原則原状回復しなくても良い点です。

一方で大家さんのメリットとしては、入居者が好みの部屋を作るため、入居期間が長くなる可能性がある点と、現在の状態で賃貸でき、修繕の費用や手間がかからない点、そして、退居時に設備・内装等がグレードアップしている可能性が期待できる点です。

具体的な手続きとしては、通常の賃貸借契約書のほかに、「申請書兼承諾書」「合意書」をあらかじめ締結して、借主がDIYすることを事前に許可します。こうした取り組みによって、ボロボロの家でも、DIYしたい入居者に安く貸すことで賃貸人・賃借人ともにWIN-WINとなります。

また、DIYが趣味でなくても、「お金がないのでできるだけ安い賃料の家に住みたい、そのためには多少ボロくても自分で修繕しながら住みます」という困窮者がDIY型賃貸借で借りたいと言ってこられる場合もあります。その場合、私はせめて修繕に必要な材料費だけは支給・補助することで、入居者のDIYを金銭面でサポートする場合もあります。