医師と患者に上下関係は存在しない
心得 心を曇らせてはいけない
人と信頼関係を築くときに、私が大事にしていることとは何か。それは、「真摯であれ」ということです。まず、しっかりと患者さんの話を聞く。この基本ができていない医師が、とても多いと感じます。
「先生」と呼ばれることで、勘違いしてしまっているのかもしれません。
ときには、患者さんは自分の言うことを聞くものだと思い込み、横柄な態度で接している医師もいます。医師と患者の間に、上下関係などありません。
私は、決して人付き合いのいいタイプではないと思います。必要以上に相手に気を遣って馴れ合うことはしませんし、お酒を飲むこともほとんどありません。時間があるなら、自分が没頭できることに割きたいと考えます。
それでも、人に対しては誠実に接したいと思っていますし、いままでもそうしてきたつもりです。群れて生きる必要性を感じたことはありませんが、出会った人に対しては、誠実に謙虚に、まっすぐに向き合いたい。
これは、「医師として」というよりも、「人として」至極当然のことだと思います。
相手の立場によって態度を変える人がいます。手術室でも、そういう外科医はたくさんいます。自分よりも立場が上の人にはペコペコし、下の者には威張り散らす。そんな人に、私は嫌悪感を抱きます。人を見下すような人は、自分より立場が上にあっても、尊敬する気にはなれません。
横柄なのは「心の曇り」「自信の無さ」の表れ
横柄な態度は、人の気持ちがわからない「心の曇り」であり、同時に「自信のなさ」から生じるものです。立場に見合う実力を備えていないから、自分を大きく見せようと尊大に振る舞っているにすぎません。
ただ、ポジションが人を狂わせてしまうこともあるので、その可能性も頭の片隅に置いておいてください。
課長や部長など、役職で呼ばれるようになると、どうしてもその役割のイメージを演じようと、自分でも気づかぬうちに悪い方向に変わってしまいます。だからでしょうか。最近はどの役職であろうと、肩書ではなく「○○さん」と名前で呼ぶことをルール化している企業が増えてきたと聞きます。
いちばん大事なのは、誰に対してもつねに真摯な姿勢でいること。心を曇らせず、年上・年下、役職にとらわれず、人と真摯に向き合うことを忘れないでください。
いい治療を受けるためにするべきこと
私は金沢大学附属病院時代の2005年から、患者さんが私に直接相談をできるようにするため、心臓手術に関する相談フォームをホームページに設けています。
「メール外来」と呼んでいただくこともあるこの相談フォームですが、これまで心臓に不安を抱える多くの方々とやり取りをしてきました。