男性が「子ども部屋おじさん」になる理由
【菅野】自室に閉じこもるという意味では、自宅の子ども部屋で暮らし続ける独身中年男性はネットスラングで「子ども部屋おじさん」と呼ばれます。
父は実家暮らしではなく、経済的には一家を支える存在として、郊外のマイホームをローンで買ったわけですが、当時の父を振り返ると、なんだか「子ども部屋おじさん」のような言葉がしっくりくるんです。
これはどう捉えたらいいのでしょうか。
【斎藤】「子ども部屋おじさん」はひきこもりやニートへの悪口としても言われますが、もちろん同じような状態の女性もいると思いますし、私が見てきた人の中にもそのような人はたくさんいます。
ただ、「子ども部屋」という言葉のニュアンスを考えると、村上春樹の本をため込んだ菅野さんの父親のように「自分の周りを趣味で固めてその中に逃避する」ようなケースが考えられます。
男性はものを所有することで自我を支えようとする傾向がかなり強くあります。一方、女性は洋服などをやたらと買い込んだりしますが、買ったらそれで満足してしまって袖も通さないこともある。男性のように「趣味を愛でる」という感じにはなりにくいと思います。
男性は物が欲しくて買い物をしますが、女性は買った瞬間の快楽を味わいたくて買い物をする。だから女性の物への欲望は、買った後は続かないんです。これは、男女の大きな違いだと思います。
【菅野】わかります。ファッションなどもそうですが、女性はそこが最大瞬間風速なんですよね。
女性は「関係性」を求め、男性は「所有」を求める
【斎藤】所有欲は男性の原理なんです。つまり、男性は「持ちたい欲望」が強い。一方、女性は「関係したい欲望」が強いんです。
【菅野】関係したい欲望というのは、毒母問題を紐解く一つのポイントのような気がします。
【斎藤】女性は「関係性」を求め、男性は「所有」を求める。腐女子だってそうです。BL(ボーイズラブ)は、いってみれば「関係萌え」なんですよね。女性はその関係性を操作したりすることに快楽を感じている。
一方、男性は「キャラ萌え」で、キャラを所有したいという欲望があります。母娘の問題を突き詰めていくと、そうした男女の欲望の違いのようなものにいきあたるように思います。