「自助」は強者の論理ではない
また、同時期に入院していた脊髄損傷の患者さんは、大のワイン好きでした。ご家族がお見舞いに来ると、決まってワインの話。私にも「退院したらワインを飲むのを目標に頑張ろうと思っているんですよ。主治医に飲酒を禁じられやしないかというのが、一番の心配の種です」と話していました。
「私の主治医も同じ先生だけど、雰囲気的には酒を飲むなとはおっしゃらない気がしますよ」「そういう感触をお持ちですか。それはよかったな」なんて話をしましたね(笑)。その方は私より後に入院されたのですが、退院は私より早かったですよ。
そうやって、弱者が少しでも「頑張ろう」という気持ちを持てる仕組みをつくることが大事だと、つくづく思います。けがなどの程度は人によって違うし、悩みも人それぞれだけど、リハビリ仲間とは同病相憐れむ関係。ばかな会話をしているなと思われるかもしれませんが、「自分で酒が飲めるようになりたい」というのだって、まさに「頑張ろう」という気持ちです。
自民党が目指す社会保障として掲げた「自助・共助・公助」を、「政治家である以上、まずは『公助』から言うべきだ」とか「強者の論理だ」などとせせら笑う人がいますが、実態がわかっていないんじゃないかと思いますよ。われわれ障害者には「公助」も必要だけど、目標を持って自らを奮い立たせている人の「自助」を、国が後押しすることもあってしかるべきだと思います。