地下室へ続く階段の上り下りに挑戦

《2017年末、約1年5カ月におよぶ入院生活を終えて退院した。翌年10月には当時の安倍晋三首相と官邸で面会し、2年3カ月ぶりに公の場に姿を見せた》

人前に出られるようになったら、まずはともあれ、安倍さんにおわびしなければと考えていました。幹事長としてある程度信用していただいていたのに、私が不注意でけがをして、安倍さんは相当気を揉まれたと思います。「谷垣は俺に幹事長続投を約束してくれたはずだ」という気持ちがおありだったに違いありません。大島理森元衆院議長にも議長公邸で会い、「これからも気を付けて」と声をかけてもらいました。

先日はトレーナーのすすめで、階段の上り下りに挑戦しました。自宅の地下室へ続く階段を、手すりにつかまって、ちょっと支えてもらいながら行き来したんです。地下室に足を踏み入れたのは久しぶりでした。

うちの地下には、けがをする前に乗っていた自転車がたくさん置いてありましてね。久々に見ると「こんなにたくさんあってどうしようもないな」と思いましたが(笑)、トレーナーとしては、私に「愛車を見る」という目標を持ってリハビリに取り組んでもらいたかったようです。

階段といえば、車いす生活になってから一度も墓参りに行けていないことが心に引っかかっています。おやじ、おふくろ、家内、みんな京都府福知山市の墓に入っているのですが、そこのお寺は階段を上らないといけない。何とかそれをできるようにしたいですね。

酒瓶のキャップくらい自分で開けたい

《政界では酒豪で知られた谷垣氏。「酒を飲みたい」という気持ちも、リハビリのモチベーションになっている》

リハビリには「頑張ろう」という気持ちを持つことが大事。けがで手をうまく使えなくなったので、作業療法士にねじの開け閉めをさせられていた時期があったのですが、これが辛気臭かった(笑)。だけど、ヘルパーさんが帰った後、もう一杯焼酎が飲みたくなったときに、酒瓶のキャップを開けられなかったら悔しいじゃないですか。これも「頑張ろう」という気持ちですよね。

酒
写真=iStock.com/akiyoko
※写真はイメージです

リハビリ仲間にも、私のような酒好きがいます。私はビールグラスなどは自分で持てるけど、中にはそれができなくて「谷垣さんは盃を自分で口まで持っていくことができる。俺もああなりたい」と、私を目標にしてくれる人もいるんですよ。