さて、みなさんは部下にあいさつをするとき、家族にあいさつをするとき、どれだけウィルを込めているでしょうか。あくびをかみ殺しながらの「ち~す」ではなく、できればあいさつを、この人生における奇跡的な出会いを称賛しあう行為にまで高めたいものです(ちょっと大げさに聞こえるかもしれませんが)。

アメリカで公園を散歩していると、すれ違う人からとてもすがすがしい笑顔であいさつをされることがあります。この広い世界の中で、ほんの一瞬、その場で出会ったその偶然を、その奇跡を称えあうかのように、あいさつが交わされるのです。

いつもいつもではないにしろ、時として、確かにこれは単なる儀式ではなくて、お互いの存在を認め合う行為なんだなと強く実感する瞬間があります。私にとっては何にも増して「アメリカっていいなあ」と思える瞬間です。

一度で良いですから「本気」であいさつしてみてください。

まず、鏡の前で何回も何回もその「本気」を練習してみましょう。そして朝、部下に会ったときには、しっかりとした、それでいて穏やかな眼差しを向けながら、少し声を低く落として伝えます。「おはよう」と。それまでのすべてのわだかまりを帳消しにして、新しい関係の始まりを予感させる「おはよう」を伝えるのです。

なお、そこで決して見返りを期待してはだめです。

「おい、あいさつしろよ」なんて言ってしまったら、相手は例のコンビニの店員になってしまいますから。相手がどうあろうとこっちは「本気で」あいさつするのです。もし部下にそんなあいさつをし続けたら、その部下もいつかディズニーランドのスタッフのように、周りにあいさつをし始めるかもしれません。もし妻にそんなふうにあいさつをし続けたら、いつの日か料亭の女将のように、心の底から労をねぎらうような声であいさつを返してくれるかもしれません。あくまでも可能性ではありますが。