自意識は自由へとつながる道において人を邪魔する

なぜそんなことがわかるのかって? 僕がそうだったからだ。読書に投じる時間は、長くても一日30分だけでいい。1冊の本で、完全に人生が変わるかもしれない。それにもかかわらず、人は自我が傷つくことを恐れ、あらゆる言い訳をして読書から学ぶことを避ける。

お金を稼ぐ実質的な方法論を教えても「別に知りたくありません。お金よりも大切なものがあると思っていますから」と余裕を見せる。本当は心からお金を求めていて、お金のせいで人生の自由を奪われ、ときにはお金にがめつい行動をとる人でさえも。それなのに、自分の思考が矛盾していることを認めようとはしない。

大多数の人は、操り人形のように自意識の糸にもてあそばれている。この糸を断ち切らない限り、自由へと前進することはできない。自意識は人間に欠かせない心の仕組みだが、自由へとつながる道において人を邪魔する。

人間には自分を守るための自意識が搭載されている

例を挙げてみよう。天才科学者が作り出した“ジス”という人型ロボットがいるとする。ルックスは人間と区別できないほどで、自ら考える力があり、自我を省みることもある。苦難や逆境に立たされると、知恵を発揮してトラブルを解決し、達成感と幸せを感じる。ジスは自分を特別な存在だと感じ、自分は人間だと信じている。そんなある日、衝撃的な場面を目撃してしまう。自分と同じような外見を持つ数多くのロボットと、開発者のコンピュータを目にしたのだ。コンピュータにはこんなプランが書かれていた。

1.すべてのロボットは知能を持つように設計する。
2.すべてのロボットは問題に直面すると苦痛を感じ、問題を解決すれば喜びを感じるように設計する。
3.こうした記憶が蓄積され、ロボットが次第に自我を持つように設計する。

ジスは設計プランを見てショックを受けるが、だんだん気持ちが落ち着いてくる。「私はそこに並べられている他のロボットとは違うの。私は開発者の意図をきちんと理解できているんだから。私は経験をベースに進化し続ける人格体。だから、私は特別な存在なんだ」

ロボットのクローズアップ
写真=iStock.com/mennovandijk
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しかし、ジスの知らないプランがもう一つあった。

4. もしロボットが自分の正体を知った場合、「私はより特別だ」と感じるように設計する。

自我が崩壊しないように。

人間もジスと変わらない。遺伝子によって定められた本能と環境に支配されている。同時に、危険から自分を守るための自意識が搭載されている。こうした初期設定に縛られない人はいない。神は数々の「一世一代の機会」を授けてくれるが、人間は自意識に妨害されてチャンスを棒に振ってしまう。「私はお金なんてなくても幸せ」とひたすら言い聞かせているが、どうすればお金が増やせるかを常に心配して、給料が安いと文句を言い、外食をするたびにメニューの価格を見て不安になる。認めよう。そこから発展が始まる。